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評者◆川崎浹
「詩」と「歴史」が結ばれる──われわれは森が場所を変える現場をつかまえられない
ドクトル・ジヴァゴ
ボリース・パステルナーク著、工藤正廣訳
No.3113 ・ 2013年06月08日




 以前パステルナークのエッセイを読んだときに「詩と歴史」という表現に出くわし、なぜ「詩」と「歴史」という極端に異なる概念が結びつくのか納得できなかった。
 この疑問に答えてくれたのが工藤正廣の新訳『ドクトル・ジヴァゴ』である。訳者は『ジヴァゴ』を滞在中のロシア人女性研究者に朗読させ、また自らも発声して録音し、できあがった二十四時間分のテープを聴きながら翻訳したという。ロシア語の質感に身をもってふれながら、彼が実直に日本語に変身させた『ジヴァゴ』は、ロシア語の原石への最もちかい距離に立ち、それ故にか読者を酩酊の多幸感に誘うのだ。
 そのパステルナークが歴史については『ジヴァゴ』でこう言っている。すべてのことは、死者が葬られる地上においてだけではなく、神の王国とも歴史とも或いはまた別の何かとも呼ばれるものの中で行われている。またこうも言う。世界の個々の動きは本能的に酩酊の性質を帯びて、あくせくと奔走しているが、そのメカニズムの重要な調節装置をなしているのが、人は相互に結びつき一から他へと転化できると確信する人間の楽天性である。
 医師ジヴァゴは野戦病院で出遇った運命のひと看護婦のラーラに、自分たちの「歴史」とは戦争と革命であり、自分たちは「新しい世紀」を創る現場に立ち会っていて、...







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