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評者◆秋竜山
ウソはつけないものである、の巻
No.3108 ・ 2013年04月27日




 内藤誼人『社交的な人ほどウソをつく』(日経プレミアシリーズ、本体八五〇円)と、いう本。
 〈米国カリフォルニア州立大学のロナルド・リッジオの調査によれば、「社交的な人ほど、ウソをつくのが上手」なのだという。なぜ彼らはウソをつくのか。〉(まえがきより)
 と、いうことは、ウソをつくのが下手な人ほど社交的ではないということか。子供の頃、親に、「下手なウソをつくな」と叱られたものだ。小学生の教科書に、ワシントンが子供の時、父親が「誰が庭の桜の木を切ったんだ」。ワシントン少年はすかさず「桜の木を切ったのは僕です」と、答えた。それを父親は「エライ。よくぞ正直にいった」と、ホメたという。ワシントン少年は「僕じゃないよ。僕しらないよ」なんて、ウソをつかなかった。ウソをつかなかったのもえらかったが、大人になってアメリカ大統領になったというのもえらかった。ウソつき少年だったらなれなかっただろうか。いずれによせ教育的な話であった。「ウソでもいいから本当のことをいってちょうだい……」なんて、芝居のセリフであったようななかったような。ウソにまつわる話はキリがない。「エッ!!ウソー」「ホントだよ」と、若者の会話の中にひんぱんに出てくる。今では大人までもが。「ウソからでたまこと」なんて、昔のいろはがるたにあった。本書とはまったく関係ないことである。本書では、ウソを見抜く心理技法を教える。
 〈心から興味を持ってくれていれば、相手は必ず身体を乗り出すようにしてくる。(略)カリフォルニア大学アルバート・メラビアンは、私たちは、相手自身あるいは相手の話に興味があるときには「前かがみ」のような姿勢をとり、逆に興味がないときや嫌っているときには「後ろへのけ反る」姿勢をとることを実験的に確認している。〉(本書より)
 ウソはつけないものであるということか。自分で気づかないところで姿勢が答えを出しているということだ。そういうしぐさをパッと見ぬくべしである。
 〈「へえ、面白いですね」「そのお話をもっとお聞きしたいですね」と口では言いながら、身体を後ろにのけ反らせるような姿勢をとっているのなら、相手の言葉は単なる社交辞令にすぎない。本当は、話など聞きたくもないのだ。〉(本書より)
 これも本書とはまったく関係ないが、よく個展会場などで、力作を観てまわる。そんな時、画の前で、どのような態度をとったらいいのか。まず、画のホメ言葉として、便利な短いヒトコトがある。「面白い画ですねぇ」と、いうのである。面白い画だといわれて、「ヤイ!! どこが面白いんだ。面白いとはなんだ!!」なんて怒る画家はいないだろう。なぜならば、面白いということは最上のホメ言葉であるからだ。すべてをひっくるめたホメである。これは、小説でも映画でも音楽にでも、あらゆる芸術作品に適用できるはずだ。この言葉さえしっていれば、どこへ行っても喜ばれるものである。そして、絵画の場合は、そのヒトコトと同時にその作品から後ろへのけ反ることである。前かがみに近づくより、後ろへのけ反ったほうが絵画を本当に見つめるしぐさであるということだ。もっとも、油絵などのゴテゴテ絵の具をぬりたくって何を描いてあるのか近くではわからない絵は、ちょっと遠くからながめると何の絵かわかるものだ。そのへんからきているのかしら、後ろへのけ反るってことは。







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