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評者◆秋竜山
絵が描きたい!、の巻
No.3107 ・ 2013年04月20日




 坂崎乙郎『絵とは何か』(河出文庫、本体六二〇円)は、〈本書は一九七六年に河出書房新書より単行本として刊行され、その後一九八三年に文庫化されたものです。〉と、ある。二〇一二年一二月二〇日、新装版初版発行であるが、かなり昔に刊行されたものだ。だからといって内容が古いのか新しいのか、わからないが、面白く読めた。肝心なのは面白いことにある。その昔、「マンガ家になりたい」と、いって父親に叱られた。「それが、駄目なら絵かきになりたい」と、いってまた叱られた。「どーやって、食べていくんだ」と、父にいわれた。それまで私は考えなかった。本書の「絵とは何か」という問いかけのようなタイトルに、あらためて、ビックリしたり、昔のあの当時のことを思い出してしまったのであった。あの時も、「絵とは何か」なんて考えも及ばなかった。そんな頭はもっていなかった。もし、「絵とは何か」と聞かれたら「絵にきまってるだろ」ぐらいしか答えられなかったろう。しかし、今、考えてみると、当時の、何もわからなかった上での絵に対する、只ひたすら描きたかった、あの情熱がなつかしい。あれは、いったい何だったんだ!! と、思ってしまう。本書の〈絵とは何か〉は〈「絵とは何か」という題でお話しします。〉で、文章が始まる。一九七六年四月一七日、女子美術大学における講演より、とある。面白かったのは講演の中で、
 〈もし美術大学が、巷間言われるように花嫁学校であるとすれば、これはたいへんな間違いを犯している。奥さんになる人が、そんなにいろんな感覚を養わなくてもいいわけです。非常に素直に、だいたいは夫といっしょに一生幸福に生きていく、そういう訓練をするのが花嫁学校だとすると、美術学校は感覚を鍛えるところだし、その感覚を鍛えられた人は、奥さんには適さない。これは小さな声で言いますけれども、女子美術大学は、大変矛盾した学校だ、ということになりますね。〉(本書より)
 講演であるから、会場には女子美術大生で満員だっただろう。この話の内容からして、著者である講師は学生から笑いをとろうとしてのものであると思う。会場からドッと笑い声がすること。それが無理なら、あっちこっちから、いや会場全体からアハハ……の笑い声。それが駄目なら、ちらほらでもいいから、とにかく笑い声がほしかったであろう。もし、シーンとしずまりかえった会場であったら。そんなことを考えたりすることは、本書とはまるっきりはずれたところで読んでいることになるだろう。
 〈絵は「想像力」である〉〈絵は個性である。これが、第二の私の考えです。〉〈それでは、絵は想像力であり、個性であればいいのか。ここでもっともむずかしいことがでてきます。絵が、「色彩」と「形」でできた感覚的な言語だということです。これは、私たちが喋っている日常の言葉ではない。完全に感覚的な言葉です。だから見た瞬間に、絵は、好きだとか、嫌いだとか、いい、悪いがわかる。〉(本書より)
 わからないことがある。それは、絵を描きたいと思う人と、絵なんか描きたくないという人がいることだ。絵かきになりたいという人と、絵かきなど、まっぴらゴメンだ!!という人がいることだ。そして、下手なくせに絵を描きたいという人だ。それが私です。







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