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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3107 ・ 2013年04月20日




◆湖の底の楽園で育てられた騎士の物語
▼湖の騎士 ランスロット
▼ジャン=コーム・ノゲス 文/クリストフ・デュリュアル 絵/こだましおり 訳
 アーサー王伝説によれば、ランスロットは、アーサー王と円卓の騎士たちのなかでも、もっとも勇敢で強い騎士でした。そんなランスロットがどのように強くなったかをえがいたのが、この物語です。アーサー王は魔術師マーリンのおかげで、ブリテンを統一することができたのですが、マーリンがいなくなり、庇護者を失ったブリテンは混乱し、征服者たちの餌食になりました。アーサー王とまだ一歳の息子、エレーヌ王妃は城を追われて、静かな湖のほとりに着きました。ですが、ふりかえると、城の塔が燃えているではありませんか。落胆した王は、落馬して亡くなってしまいます。そして、悲嘆にくれたエレーヌの手から息子が連れ去られたのです。泣き叫ぶエレーヌに、遠くから声が聞こえてきました。「落ち着きなさい、なんとか耐えるのですよ。これで、敵はおまえの息子に手出しできない。世界で最も優れた騎士になるよう、湖の貴婦人ヴィヴィアンがこの子を救ったのです」。
 魔術師マーリンが遠くから見守るなか、息子は湖の底の楽園で育てられ、ランスロットになるのです。この本は、そんな成長の姿をえがいています。(3・20刊、28×27cm五六頁・本体二四〇〇円・小峰書店)


◆モンゴルずもうを思わせる力くらべ
▼ゴナンとかいぶつ
▼イチンノロブ・ガンバートル 文/バーサンスレン・ボロルマー 絵/津田紀子 訳
 モンゴルの子どもたちによく知られている、ちいさな英雄ゴナンの物語です。ゴナンは子どもながらに勇敢で力強く、遊牧民の理想とする姿として、草原にくらす人びとに親しまれ、語りつがれてきました。
 ゴナンはモンゴルの草原にすんでいました。まだちいさいのに、一さいで一〇人ぶんの、二さいで二〇人ぶんの、三さいで三〇人ぶんのしごとを、たった一人でこなしてしまうほどの、ものすごい力もちでした。
 そんなあるとき、おそろしい怪物マンガスが村をおそってあばれまわり、牛や羊をうばっていきました。それをみたゴナンは、「マンガスをやっつけにいく!」といって、白い馬にのり、まっ赤なじごく海をこえ、がいこつ山をきりひらいて、マンガスの家にたどりつきました。「でてこい、マンガス!」。すると、地のそこからひびくような、しわがれた声がして、赤い眼をぎらぎらさせたマンガスがでてきました。
 こうして、ゴナンとマンガスの力くらべのはじまりです。弓くらべ、かけくらべ、ついにはとっくみあって、三日三晩すもうをとりつづけたのです。いったい勝負はつくのでしょうか。手に汗にぎるモンゴルずもうを思わせる、力くらべの結果はいかに。(3月刊、24×26cm三二頁・本体一五〇〇円・偕成社)


◆戦争と子どもをテーマにした希望の物語
▼かあさんは どこ?
▼クロード・K・デュボワ 作/落合恵子 訳
 ある日とつぜん、戦争で家族とはなればなれになって、ひとりぼっちになってしまった男の子のお話です。背景には、ベルギーの絵本作家クロード・K・デュボアが子ども時代に経験した、第二次世界大戦があります。突然ドイツ兵がやってきて、母の両親を連行したのです。大人が誰もいなくなった家に、子どものデュボアたちは取り残されてしまったのでした。
 この物語の主人公である男の子も、空襲で逃げまどい、母や妹、ともだちをさがしたけれど、いません。ある日、兵隊たちがやってきて男の子を連行し、井戸の水くみのしごとをさせました。たべものも、ほんのすこししかあたえられません。
 また爆弾が落ちてきて、兵隊たちがちりぢりに逃げるなか、男の子ははしって逃げました。またひとりぼっち。あるいて、あるいて、やがて避難民にまぎれてくらすようになりますが、かぞくは? 母さんは? とかんがえると、ほかの子とあそんでも楽しくありません。男の子は母さんと再会できるのでしょうか――。戦争と子どもをテーマにした、希望の物語。(2・25刊、14・8×21cm九六頁・本体一四〇〇円・ブロンズ新社)


◆イラクの子どもたちからのメッセージ
▼イラクから日本のおともだちへ――小さな画家たちが描いた戦争の10年
▼佐藤真紀・堀切リエ 文/JIM‐NET 協力
 7000年も昔にメソポタミア文明がさかえ、500年以上前にアラビアンナイトの物語の舞台となったイラク。そこに一九九一年、多国籍軍が空爆をおこない、推定で300トンもの劣化ウラン弾を落として、放射能汚染をまきちらしました。
 ガンになる子どもがふえました。でも、戦争は終わりません。二〇〇三年になって、米英軍はふたたびイラクを攻撃し、夜空が明るくなるほど爆撃をおこなって、町は燃え、家は破壊されて、子どもたちが殺されました。両親も、おじいさんも、おばあさんも、ともだちも死にました。
 この本は、戦争で傷つき、病気になった子どもたちの絵とメッセージを編んだものです。そのひとり、ラーラは一四歳で白血病になり、隣国ヨルダンで治療をうけて、いったんはよくなったのですが、再発し、もうすぐ結婚式という二〇歳のときに亡くなりました。サルマンは六歳のとき、とつぜん鼻血が止まらなくなり、白血病と診断されました。ハスランが描いたのは、鼻や歯茎から血を流している顔の絵です。
 内戦が続き、戦火が絶えないなか、イラクの子どもたちが、東日本大震災で傷ついた日本のともだちへ宛てた絵とメッセージもおさめられています。二一世紀の平和への願いがこめられた、とてもたいせつな絵本です。(2・14刊、B5判四八頁・本体一七〇〇円・子どもの未来社)


◆バイリンガルと色彩で奏でる、夢と希望
▼もうひとつのかぐや姫
▼西川律子 文・絵/Megumi Powell 英訳
 かぐや姫のお話を、日本語と英語のバイリンガル、さらに美しい色彩の絵でえがいた絵本です。みなさん、かぐや姫の話はおぼえているでしょう。でも、この絵本は「もうひとつの」とあるように、ゆたかな絵柄と日英のことばで、物語の世界をさらにひろげてゆくのです。
 物語のあんない人は、「あなたの心」なのだそうです。絵本にひろがる色と形が、物語への旅のおともです。色彩のゆたかさに誘われるようにすすむ物語は、おおきな宇宙の中の、月と地球というスケールで展開されます。かぐや姫とめぐりあう皇子が、荒れはてた地球を平和な、もとの美しい地球にもどしていくのです。
 未来への夢と希望をはぐくむ子どもたちに捧げられた、永久なる月と地球のための、もうひとつの物語。(3・15刊、B5判三六頁・本体一二〇〇円・銀の鈴社)


◆忘れてはいけない三つのことばの絵本
▼「かみさま あのね」シリーズ全三巻、1『ごめんなさい』/2『ありがとう』/3『おねがい』
▼シャーロット・ストウェル 絵/ゴードン・ストウェル 文/女子パウロ会 編訳
 ごめんなさい、ありがとう、おねがい、の三つは、とてもたいせつなことばです。いけないことをしたとき、ごめんなさい。うれしかったとき、ありがとう。たのみごとをしたいとき、おねがい。日々のくらしのなかで、神さまにお祈りしながら、三つのことばをかけあうことができれば、幸せで平和な世のなかをつくっていくことができる。そんな思いで、「かみさま あのね」シリーズをひらいてみます。
 シリーズが『ごめんなさい』から始まるのは、ほんとうにだいじなこと。だって、ほかのひとのことをわすれて、悪さをしたり、いじわるしたことに気づいたら、ごめんなさいって言わなきゃいけないでしょう。すると、もっとやさしく、しんせつになれる。神さまはそんな気もちを思いださせてくれるのです。せかいじゅうのもの、みんなありがとう、神さま、いつもありがとうという気もちになれる。そうして、みまもってください、ねがいごとがかないますようにって、神さまにおねがいします。忘れてはいけない、ことばの大切さを教えてくれる絵本です。(10・1刊、各8・5×8・5cm二四頁・本体各四〇〇円・女子パウロ会)







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