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評者◆秋竜山
催眠術で一番必要なこと、の巻
No.3106 ・ 2013年04月13日




 催眠術というものは、一人だけではどーにもならないものである。最低限二人いなくては。催眠術というものは、かけたり、かけられたりするものである。催眠術で困ってしまうのは、果たして本当に、かかっているのかどーかということだ。かけられているふりをしているのではないだろうか。しかし、かけられているふりも、かかった状態であると解釈してしまえば、問題はないだろう。それが催眠術というものだ!! ……なんて、私の催眠術に対する理解度といったら、その程度である。林貞年『誰でもすぐできる催眠術の教科書』(光文社新書、本体九五〇円)は、
 〈この本は、催眠術をマスターするための教科書です。初心者からプロの催眠術師、そして心理カウンセリングを行う催眠療法士まで、その技術を高めることはもちろん、図解を用いて説明していますから、初心者でも簡単に催眠術のかけ方をマスターすることができます。催眠術は心理学の一分野であり、霊能力や超能力とは一切関係ありません。だからどんな人でも習得できるのです。〉(まえがきより)
 本書では、〈催眠術のかけ方はマスターするのが簡単で、しいて言うなら車の運転を覚えるときと同じくらいの感覚です。〉とあるが、そんなものだろうか。〈解説どおりに実行すれば簡単に催眠術がかけられます。〉と、あるが、だとしたら、本書を読んだものは催眠術をかける術をおぼえることになるだろう。そんなものだろうか。催眠術をマスターできたとする。すると、誰かをみつけて、催眠をかけたくなるものだ。車の運転は、メンキョを取ったとしても、運転しなかったら、運転できなくなってしまうものだが、催眠術もせっかくおぼえたらだれか協力者を見つけなくては。それがむづかしい。初めの二、三回は協力してくれるだろうが、そんなにはつきあってはくれないだろう。「お前の、その催眠術にあわせるのには、もー、つかれたよ!!」なんて、ね。私が、催眠術の中で、もっとも興味あるのは、催眠にかかっているひとを、どうやって解くか、ということである。いくら解こうとしても、催眠からさめることができない!! なんてことになったらどーしましょう。本書はそんなことのためか、ちゃんと〈催眠術の解き方〉で解説している。催眠術で一番必要かつ大切な項目であるだろう。
 〈通常は、「催眠が解ける」という意図が被験者に伝われば催眠は解けます。眠っているわけでも意識を失っているわけでもありませんから、必ず誘導者の「覚める」という暗示は入ります。それまでのさまざまな暗示が効いているなら、「覚める」という暗示だけが入らないことはないのです。心配はいりません。堂々とした態度で催眠を解いてください。おどおどとした態度で催眠をかけると、かかりが悪いように、催眠を解くときの暗示もおどおどとしていると暗示の力が弱くなります。〉(本書より)
 放っておいても催眠は勝手に覚めます!! と、いうことである。こういうことってあるだろうか。誘導者は「覚めています」と、いうのに、被験者は「まだ覚めてない」という。「オイ!! あの時、かけられた催眠が、今だに覚めてないぞ」なんてことになったら、どーしましょう。まず。催眠術というものは、そんなマンガみたいなものではないだろう。







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