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評者◆ベイベー関根
大正生まれのエロかわ(ゆるかわ?)ギャルズ登場!──坂口安吾原作/漫画近藤ようこ『戦争と一人の女』(本体一〇〇〇円・青林工藝舎)、岡野雄一『ペコロスの母に会いに行く』(本体一二〇〇円・西日本新聞社)
No.3105 ・ 2013年04月06日




 うむう~、これはたしかに聞きしにまさる傑作だわい。いや、漫画近藤ようこ/坂口安吾原作『戦争と一人の女』のことね(ところで、この肩書と名前の順番はカバー表1のママ。背だと肩書と名前の順番はそのままで、近藤と坂口の順番が入れ替わるんだけど、なんか意味あんのか?)。
 いうまでもなく、GHQの検閲が入って長く元のかたちで読むことができなかった坂口安吾の同名小説、及びその続編(というか姉妹編)、それと「私は海をだきしめていたい」を合わせてマンガ化したもんだけど、『夜長姫と耳男』『桜の森の満開の下』に続いて、真打ち登場! という感じの力作ですわ。話は戦争中に同棲を始めた不感症の元バーのマダムと脚本家の野村(と戦争)の関係を描いたもの。女は野村を愛しているが、野村は女が浮気をするものと信じている。野村は女の肉体に魅せられているが、女は戦争が終われば野村は自分を捨てると思い込み、戦争が終わらないことを願う。だが、野村は空襲が女を欲情させていることに気づいている……。
 いや~エロい! いわゆるエロい絵とか、線がエロいとか、観念のエロとかじゃないんだけど、「関係の深まり」のエロってのがありまして、そこを鋭く突いてくるね。これはヌケるヌケないが大事なコドモには難しいかもしれん……。
 で、さっそく「戦争と一人の女[無削除版]」が載ってる『桜の森の満開の下・白痴』(岩波文庫、あとがきには講談社文芸文庫って書いてあるけど、注意!)を買ってきた。いや、こりゃスゲーわ。マジで今こそ読まねばならぬ作品だ!
 で、そこから受けた印象でマンガにひとつだけないものねだりすると、マンガに出てくるのはいつもの近藤顔の男女なんだけど、どっちかというと女はもうちょいケモノ顔ないしトリ顔なんじゃないかね?
 さて、もう1冊いけるかな? こっちもスゴいぞ、早くも映画化が決定した、岡野雄一『ペコロスの母に会いに行く』だ!
 作者a.k.a.ペコロスはなんともう62歳、離婚して息子とふたりで郷里の長崎に戻り、週2回は認知症の母みつえの住むホームに通う日々。そんな母親を愛情溢れる目で見守るうち、作品はいつしか母親の記憶の層に潜り込む……といっても別にSFじゃないよ。
 全編にフィーチュアされる長崎弁もいい感じなんだけど、いやー、このみつえさんが可愛いくてねー。飲んだくれで幻覚幻聴に悩まされた父親が戻ってくるところとか、はっきりいって泣けるんですわー。なんだよ、前回はコドモで今回はババアかよ、泣きすぎちゃうかというなかれ。これが抒情というものよ、最後のコマを引きにすれば余情が出せると思い込んでる今日マチ子はこれを読んで猛省するように!
 で、なんで今回この2冊にしたかというと、実はこのみつえさんと『戦争と一人の女』の主人公の女って、ほとんど同じくらいの年かっこなんじゃないの、と気がついたからで……。
(セックスシンボル)







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