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評者◆はにぃ
文章力ではもう大幅に超えている
藝人春秋
水道橋博士
No.3104 ・ 2013年03月30日




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 今回のはにぃさんの書評では、書き出しとラストに押しつけがましくない形で自身の価値観が加えられています。さらにそこにひと押し「批評」がプラスされれば文句ナシ。今後への期待も込め、今回の一本とさせて頂きました。
次選レビュアー:wings to fly〈『ならずものがやってくる』(早川書房)〉、風竜胆〈『MBA流 チームが勝手に結果を出す仕組み』(PHP研究所)〉


 お笑い芸人でありながら、大騒ぎするタイプではなくいつもどこか冷めた目をしている。健康オタクだというのもお笑いっぽくない。そう思っていた、たけし軍団の浅草キッド・水道橋博士。
 石原慎太郎氏から突然電話があって「君の文体はな、三島由紀夫に似てるんだ」「純文学を書きなさい。私が見てあげるから」と言われた……そんなエピソードを週刊誌で見かけてから、ずっと気になっていた。
 本書は、水道橋博士から見た14人の有名人たちと、いじめ問題について書かれた「TVの裏側の物語」である。軍団の先輩で度を超えた大真面目と大馬鹿がそのまんま同居している「年中夢中」な東国原英夫氏。岡山大学附属中学で同級生だった「日本のロック界に革命を起こした」甲本ヒロト氏。草野仁氏の章では、頼まれて出場した長崎県の相撲の国体予選で相撲部でもないのに優勝する。初めて体験したレスリングで大学のレスリング部の部員に勝つ。高2の時、100m走で11秒2を記録した……そんな東大卒の文武両道なスーパーひとしくんのふしぎを発見していく。
 「私がロックフェラーセンタービルを売った男です」「オレがあのロックフェラーセンタービルを買った男なのね」と言い合う自意識過剰な国際弁護士・湯浅卓氏と脳機能学者苫米地英人氏の大言壮語なエピソードでは抱腹絶倒させられる。一方、稲川淳二氏やいじめ問題についての章では、悩み葛藤しながら綴っている様子にホロリとさせられた。
 その他、あっけらかんとした堀江貴文氏、デタラメでハチャメチャな異才テリー伊藤氏、一時期懇意にしていたポール牧氏……など幅広い個性豊かな面々について、驚異的な記憶力と冷静な観察眼で分析し、石原慎太郎氏絶賛の文章力で読者を惹きつけ、芸人の巧みさで笑かしてくれる。
 文体が三島由紀夫に似ているかどうかは全くわからないが、笑いながら読んでいても、彼の苦悩や悲壮感が伝わってくる。
 息子に武(たけし)・娘に文(高田文夫氏より)と名付けるほど、殿や高田文夫氏の才能を心から崇拝し、「あなたに褒められたくて」お笑いをやっているという。
 しかしどうやっても自分には越えられないと諦め、達観しているその姿勢に感動を覚えた。お笑いの世界では、この先も彼らを越えられないのかもしれない。いや、越えられないだろう。でも、もうこのままで十分なのではないだろうか。文章力ではもう大幅に超えているのだから。







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