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評者◆秋竜山
マンガチックな演劇、の巻
No.3102 ・ 2013年03月16日




 平田オリザ『わかりあえないことから――コミュニケーション能力とは何か』(講談社現代新書・本体七四〇円)で、まず、笑ってしまった。私にとって、なんともなつかしいというか。平田オリザさんといえば、当代人気演劇家である。そのプロフィールで、一九六二年東京生まれ、であることがわかった(これはジューヨウなことである)。そして、国際基督教大学在学中に劇団「青年団」結成。戯曲と演出を担当、と、ある。さて、この劇団名である。なにゆえもって「青年団」と、いうことか。と、いうことは、この「青年団」の団員は、「青年団員」と、いうことになるのだろうか。「アア……なんとなつかしい呼び名であろうか!!」と、私。かつて、私は「村の青年団員であった」のだ。日本中、「青年団」というキビシイ若者の集団が、どこの村にもあった。若衆組ともいったっけ。中学を出ると十四歳から二十五歳までの男子はその組織に入れられた。村の決まりであるから、「イヤだ!!」と、いうことは村人にはなれないことであった。「青年団員」は若衆宿で共に寝泊りしなければならなかった。一九六二、三年の頃、そんな歴史は幕をとじた。アッという間のできごとであった。日本中から「青年団」が消えた。「そんな時代ではない!!」と、いう理由であった。私はその時、最期の青年団員として思った。「歴史とはいったいなんだ!!」。みんなで「あっけないもんだなァ」と、いいあった。「解散」という言葉のあっけなさは、国会のわけのわからない「バンザイ」である。とってつけかもしれないが、そんな時代に、平田オリザさんは、オギャーと生まれた。そして、そんなことを知ってか知らずか、「青年団」という劇団を結成したのであった。昔の村の青年団とはまったく関係ないだろうけど、「青年団」という昔、そんなものがあったことを知っているものにとっては、なにかしら、うれしいものがある。なつかしさがこもったうれしさなんだろう、きっと。私は演劇というものがよくわからないが。それでも観劇となるとワクワクしてくる。
 〈強弱アクセントによって感情を表現するという歪んだ(間違ったとまでは、あえて言わないが)演技法が、二〇世紀初頭の日本における近代演劇の成立以来、ずっと長く流布してきた。演劇に対して多くの方が感じている。胡散臭さ、暑苦しさ、要するに「芝居がかった」「芝居臭い」という感覚は、実はここに由来する。〉〈どうしてこんなことになってしまったのかは様々に理由があって、ここにそのすべてを書くことはできない。興味のある方は、拙著「演劇のことば」(岩波書店)を読んでいただければと思う。ただ、その最大の理由は、やはり西洋で生まれた近代演劇の輸入の仕方を、多少間違えてしまったというところにあるだろう。(略)他の多くのジャンルと同様に、日本人は忠実に西洋近代演劇を模倣した。髪を金髪にし、つけ鼻をつけてまで。ただ、さらにその上、感情を強弱アクセントによって表現するという欧米の言語、特に英語、ドイツ語、ロシア語、などに特徴的な発語の方法まで真似してしまった。〉(本書より)
 だから演劇はたのしいんだ!! と、いうとお叱りをうけるかもしれないが、そういう演劇がどんどん遠ざかっていくと、ますますマンガチックになっていって、面白くなる。







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