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評者◆秋竜山
やっぱり食べなきゃ駄目だね!!、の巻
No.3100 ・ 2013年03月02日




 平野芳信『食べる日本近現代文学史』(光文社新書、本体七四〇円)では、明治以降の日本の文学の〈食べる場面〉を考察している。人間は食べなければ死んでしまう。で、フッ!! と思い出したのは文学ではなく漫画のことだった。それは、無人島漫画である。無人島漫画というのは世界的に有名であるとか、万国共通のテーマの漫画であるとか、よくいわれる。はたしてそーかねえ。知る人は知っているけど、知らない人は知らない、というのが正しい見かたのような気がする。ある人にいわれた。もちろん、無人島漫画を見ながら。無人島漫画というのは絶海孤島(孤島漫画ともいう)。タタミ一枚ぐらいの広さにヤシの木が一本立っている。他には何もない。そこに漂着した人間。それがすべての風景である。ある人が私にこういった。「この人間は何を食べて生きているんでしょうねぇ」。何を食べるといっても、釣りにかかった魚以外になにもない。のに、何年も生き続けている。その人にとっては、たずねるくらいだから不思議に思ったのだろう。私は、「そーいえばそうですね」と答えておいた。この人に、この無人島においては、食べることなど考える必要がないでしょう!! なんて、いおうものなら、「なぜ必要ないのですか。食べなかったら人間は死んでしまうでしょう」と、いわれるに決まっている。
 本書では小説にあつかわれている食べ物や食事をしているところが出てくるが、やっぱり人間ってたべなければ駄目だねえ!! 食欲なんてありません……なんてのは人間としてミリョクないのかねえ!!と、思えてくる。
 〈第一章 食べることと《文学》〉〈第二章 食べることと《性》〉〈第三章 食べることと《女》〉と、続くわけだが、他人が食べるところを見ても、誰も文句をいわないようだ。かといって、そんなに、おいしそうに食べている、俺にも食べさせろ!! なんて気持もわいてこない。一番いい例が、テレビの食べ物番組である。タレントたちが食べているのを見ていても、一度も、腹の虫がグウとないたことがない。番組が面白いのか面白くないのか、もわからない。どこのチャンネルをまわしても、食べ物番組をやっているから、どれでもいいから見るしかないだろう。このままでいったら食べ物番組はどうなってしまうのか。行く末が心配にもなってくる。テレビというものは、面白くなければ存在があやぶまれる。
 なぜ、こんなことになってしまったのか、ちょっと考えてみた。すると答えのようなものが出た。タレントなどが、料理を食べた後、十人が十人とも「うまい!!」と、大ゼッサンする。テレビを見ているものは十人が十人とも、そんなことを信じていない。「うまい!!」という一言は、「面白くない」ということである。そこで未来の食べ物番組は「うまい!!」と、いってはいけない。面白くするためにも「まずい!!」といわねばならない。十人が十人とも「まずい!!」というべきである。これを見て視聴者は手を打ってよろこぶ。本書の〈食べること〉から脱線してしまったが、文学における食後の一言は「うまい!!」などといわないようだ。それは読者が決めてくれ!! と、いうことか。たとえ、うまくなくてもお袋の味はうまいのである。「お袋は一度もうまいものを食べさせてはくれなかった」と、思ったとしても、お袋のつくった料理を食べたいものだ。







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