書評/新聞記事 検索  図書新聞は、毎週土曜日書店発売、定期購読も承ります

【重要なお知らせ】お問い合わせフォーム故障中につき、直接メール(koudoku@toshoshimbun.com)かお電話にてバックナンバー・定期購読の御注文をお願い致します。

評者◆伊達政保
敗者そして女性の生き方にどこまで迫れるか──33年ぶりに会津藩が舞台となるNHK大河ドラマ『八重の桜』
No.3100 ・ 2013年03月02日




 NHK大河ドラマ『八重の桜』が始まった。会津藩砲術師範山本覚馬の妹で、戊辰戦争の会津鶴ヶ城籠城戦をスペンサー七連発銃を手に戦い、後に京都で兄の覚馬とその友人の新島襄と共に同志社を創立、後に新島八重となる山本八重が主人公となっている。一昨年の東日本大震災、福島原発事故を受け、東北及び福島を元気づけようと、当初の企画を差し替えて製作を決めたという。八重には一昨年、TBSの連続SF時代劇『JIN‐仁‐』で好演した、綾瀬はるかがあたっている。大河ドラマでは33年ぶりに会津藩が舞台となり、敗者そして女性の視点から明治維新を描くというが、どこまで迫れるか。また明治薩長藩閥政権下で賊軍とされた人々、とりわけ女性の生き方がどう表現されるか、今後のドラマの展開を注目せざるを得ない。
 オイラ両親が会津の出身で、曾祖父は会津戦争を体験し、祖父からは「この前の戦争」の様子を繰り返し聞かされ、「おのれ薩長」の意識の下に育ってきた。高校まで仙台、盛岡、秋田等、東北を転々とし、会津の長所も欠点も理解しているつもりだ。「会津士魂」と謳われた至誠は疑うべくもないが、頑迷固陋、旧態依然の身分意識が会津藩敗北の一因であることは間違いない。その象徴たる人物が会津藩門閥家老西郷頼母である。徳川及び藩祖の血統を引くため気位が高く、養子である藩主松平容保をも見下す狷介な性格だったという。非戦を唱えたためか、これまでに何度か『白虎隊』ドラマ化の中では、先見性のある開明的人物として描かれていた。今回の大河でも西田敏行が演じており、現在まではそうした扱いである。白河戦争時、会津藩本陣近く会津新選組屯所があった村の祖父は、戦を知らない西郷が指揮したため白河は落城し、それから会津は負け戦となり、一族女子の自刃により名を残したと言っていた。白虎隊も今日のように美化されたのは、戦前軍国主義の時代になってからだ。それまでは、戦ではぐれた一部の隊士が落城と錯覚し殉死した悲劇としてであった。それ以外の白虎隊は以後も城内城外で戦い続けていることを忘れてはならない。
 会津藩が真の藩政改革を行なったのは籠城戦の直中においてであった。これまでの家老達を降格追放し、山川大蔵、梶原平馬、秋月悌次郎など京都守護職時代に頭角を現し、国外留学経験も先見性もある若手が藩の中枢を担うことになる。しかし遅すぎた。この改革をいち早く行なっていれば会津藩そして奥羽越列藩同盟の敗北は防げたかもしれない。今回のドラマはそこまで迫れるかどうか。単に会津を美化するだけに終わってしまうような気がするが。でも期待してしまう。
(評論家)







リンクサイト
サイト限定連載

図書新聞出版
  最新刊
『新宿センチメンタル・ジャーニー』
『山・自然探究――紀行・エッセイ・評論集』
『【新版】クリストとジャンヌ=クロード ライフ=ワークス=プロジェクト』
書店別 週間ベストセラーズ
■東京■東京堂書店様調べ
1位 マチズモを削り取れ
(武田砂鉄)
2位 喫茶店で松本隆さんから聞いたこと
(山下賢二)
3位 古くて素敵なクラシック・レコードたち
(村上春樹)
■新潟■萬松堂様調べ
1位 老いる意味
(森村誠一)
2位 老いの福袋
(樋口恵子)
3位 もうだまされない
新型コロナの大誤解
(西村秀一)

取扱い書店企業概要プライバシーポリシー利用規約