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評者◆竹原あき子
【最終回】 重い歴史を刻むポーランド図書館
No.3099 ・ 2013年02月23日




 サン・ルイ島は観光客であふれる名所だが、セーヌ河畔には特別美しい邸宅が並ぶ。かつてルイ14世の秘書官が住んだ邸宅の一つがポーランド図書館になった。河畔を散歩していてもそこに図書館があると気がつくことはない。というのは、わかりやすいサインがなく、たとえ扉が開いていても足を踏み入れていいのかどうか迷うほどヒッソリとしている。だが入り口をくぐり中庭にでると、正面にこの館の歴史を刻んだ石盤があり、右手1階に展示場、左にも展示場。その横の階段を登るとサロンが二つと閲覧室がある。小規模だがポーランド文化をパリで披露する瀟洒な建物だ。
 1830年、ワルシャワ蜂起に失敗したポーランド人1万人がパリに亡命した。1853年、彼らは祖国ポーランド文化を子孫のために守ろうと、この館を購入した。ロシアから攻撃をうけ陥落した祖国の不幸を知ったショパンが「革命のエチュード」を作曲したのは、演奏旅行中のことだった。やがてパリに移り住んだショパンは、この館を「ポーランドの植民地」とまで呼んだほど、ポーランド人のよりどころだった。蔵書は、亡命しパリに住んだポーランドを代表する詩人ミツケヴィッチの作品を中心に、書簡はもちろん、ポーランドの絵画、版画、彫刻、デッサン、コスチュームなどがある。これらの収蔵品のほとんどは、亡命ポーランド人からの寄贈品で成り立っている。
 18世紀から19世紀の伝統的な館を改修したパリにある各国の文化施設は、それぞれの文化を象徴するが、ポーランド図書館は、世界中で愛されたショパンをその象徴に祖国の文化を伝えようとしている。世界中のだれもが愛するショパンの記念品と、ショパンが弾いたプレイエルのピアノがこの図書館を際立たせているのは、多くの不幸に見舞われたポーランド文化にとっての暁光ではないか。
(和光大学名誉教授、工業デザイナー)







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