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評者◆秋竜山
たしかにすっきりわかった、の巻
No.3097 ・ 2013年02月09日




 小川仁志『すっきりわかる!超解「哲学名著」事典』(PHP文庫、本体六四八円)を読む。「ウム!! たしかに、すっきりわかった」と、思わせる。よく、考えてみると、わかったというもの!!もないが……ね。しかし、わかったと思ったことを大切にしたいものだ。わかるということは、そーいうことで、わかったと思ったこと以外のことは何も余計なことは考えてはいけないのかもしれない。哲学が難解なのは当たり前のことである。難解でなかったら哲学ではないとさえいわれている(いわれていないかもしれないが)。
 〈哲学の古典はやはり手強いものです。何しろ哲学者たちは、他人にわかってもらおうと思って書いていませんから。彼らの第一目的は物事の本質をとらえることです。そのために全力を尽くします。妥協もしません。だから難解な表現でしか表せないのなら、迷わずそうするのです。そして往々にして、物事の本質は難解な言葉で表現されます。なぜならあらゆる角度から光を当て、それを描写する必要があるからです。そしてその複数の描写を単純な言葉に回収してしまうようでは意味がありません。だからまわりくどくなるのです。〉(本書より)
 むづかしい言葉を使うと、「彼は、たいしたものだ」なんていう。もっと、わかりやすくいえばいいのに!! と、思うのだが。なのに、人は、むづかしい言葉に弱い。むづかしい言葉を一つでも多く使ったほうの人物をエライ!! なんて、思ってしまうのである。居酒屋などで飲みながら、酔っぱらいの最中に、「人間は考える葦である!!」などと、大声で叫ぶものがある。有名な一言である。……ことは誰でもしっている。一瞬静ジャクがただよう。「それ、どーいう意味ですか?」なんて、いう人はいない。もし、そんなことを口にしようものなら、「こいつ!! なんにもしらないのか」なんて、みんなに思われてしまうのを恐れるからだ。よく考えてみると、哲学者パスカルがいった「人間は考える葦である」とは、いったいどーいう意味なのか。わかっているようで、実はわかってないのである。哲学である以上、わからなくてもよいのであるという、アキラメのようなものがある。だから、凡人でも使える言葉であるのだ。
 〈人間の偉大さと悲惨さの矛盾に関して、最も有名なのは、「人間は考える葦である」という表現なのではないでしょうか。葦とはすぐ折れる、か弱い植物のことです。パスカルは次のようにいいます。「人間は自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない。しかしそれは考える葦である」と。考えるという行為は人間にしかできません。裏を返すと、それだけ考え事や悩みが多いということなのでしょう。(略)〉(本書より)
 たしかに、人間なんて弱いものであって、そのくせ強がりばかりいっているのである。♪オーレエはカハラの枯ススキ、ではないが、オレエはカハラの枯アシ……である。考えるという行為は人間にしかできない。なんて、救われるようなことになっているが、ロダン作の「考える人」を思い出す。その脇に一本の葦を置いたら、芸術と哲学の共作となるだろう。本書をポケットにしのばせて、時折りページをめくってみる。一瞬なりとも「すっきりわかった」と、思うことの気分のよさは哲学的心よさというべきものか。







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