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評者◆伊達政保
新たな運動形態がつくられつつある──野間易通著『金曜官邸前抗議――デモの声が政治を変える』(本体一七〇〇円・河出書房新社)
No.3097 ・ 2013年02月09日




 運動の参加者でありスタッフの著者による、現在進行中のドキュメントが野間易通著『金曜官邸前抗議‐‐デモの声が政治を変える』(河出書房新社)である。毎週金曜日、午後6時から8時まで首相官邸前で行なわれている原発再稼働反対の抗議集会のこれまでの経過を、運動の内部から冷静な目で述べた、これまでにあまり無かった本だ。
 オイラがこの首相官邸前抗議集会(後に官邸前デモと通称)を知ったのは、昨年3月末、音楽評論家の友人から、反原発のツイッター・デモをやってきた音楽関係者たちが官邸前で抗議集会を開き、来週も行なわれると聞いてからだ。4月6日官邸前に行くと、これまでの反原発デモやソウル・フラワー・ユニオンのライブや東北支援ツアーなどで出会った、多くの音楽関係の友人や顔見知りが参加していた。ミュージック・マガジン編集者の時からの顔見知りで、ツイッター・デモを呼び掛けていた野間君も「首都圏反原発連合有志」のスタッフとして活動していた。以後、一人の参加者として、都合がつく限り官邸前に行くことにした。そこにはこれまでの運動とは違う、新たな運動形態が作られつつあるように思えたからだ。方向性や手段は異なるが、初期の全共闘運動が、手探りで自分達の運動形態を作り出そうとする姿に似ていたともいえる。
 本書を読んでもらえばよく解ると思うが、官邸前抗議集会の主催者「首都圏反原発連合」には、集会に参加する大衆を組織化して自分達の運動にしていこうとする意図は全く無いと言っていい。参加する個々人の抗議の声をあげる場を、安全に事故の無いように確保し継続することに全精力が注がれてきた。そのためには警察とも協議し、参加者には道交法等のルールを守ってもらうというものである。また音楽関係者が多く関わっているためか、音楽イベントでの会場整理のノウハウを使っているように思われた。そして反原発、原発再稼働反対というシングル・イシューによる個人の主張に限定し、組織の旗、団体の主張は遠慮してもらうという集会形態が出来上がっていった。こうしたルールはこれまでの活動家から反発を呼び起こし、日の丸の旗の参加を巡っては、批判が巻き起こった。無用の批判を避けるため日の丸は掲げられなくなったが、著者は本書において許容してもいいのではないかという立場を取っている。オイラも全くそう思う。
 故・平岡正明は大衆運動の行動組織に関するテーゼで「17、全成員がどうしたら勝てるかという一点で一致すべきであって、自分達がどのような思想性をもつべきかという一点で一致しようとすべきではない」と言っているではないか。
(評論家)







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