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評者◆殿島三紀
冒険は一回じゃ終わらない──監督 ドロタ・ケンジェジャフスカ『明日の空の向こうに』
No.3096 ・ 2013年02月02日
『駆ける少年』『もうひとりのシェイクスピア』『マリー・アントワネットに別れをつげて』「愛について、ある土曜日の面会室』『明日の空の向こうに』などを観た。
『駆ける少年』。伝説のイラン映画と言われるアミール・ナデリ監督作品。監督の自伝的映画。主人公が炎を噴き出すガス田を走り抜けるラストは圧巻だ。 『もうひとりのシェイクスピア』。ローランド・エメリッヒ監督が10年来の懸案だったシェイクスピア別人説を映画化。 『マリー・アントワネットに別れをつげて』。フランス革命をヴェルサイユ宮殿の中から眺めた映画で、覗き見しているような気分にさせられる。ブノワ・ジャコー監督作品。 『愛について、ある土曜日の面会室』。ロシア人と交際、妊娠したサッカー好きの女子高生、息子を殺されたアルジェリア人の女性、仕事も家庭もうまくいかない不器用な男。刑務所の面会室に至る3つのエピソードから成る。弱冠28歳のレア・フェネール監督の作品。沁みた。 今回ご紹介するのは『明日の空の向こうに』。主人公の少年たちがロシアからポーランドへ越境する映画。少し前なら、ソ連から衛星国ポーランドへと越境していく映画など考えられなかっただろう。ま、ロシア共和国からだが。1989年にベルリンの壁が崩壊し、91年にソ連が解体して以来、歴史の車輪はドリフト走行しているのだから、なんでもありか。 冒険ロードムービーとも言える作品だが、主人公の少年たちは結構悲惨な状況下にある。親も身寄りもなく寝泊まりは駅舎。物乞いやら、ちょっとしたものをくすねたりしながら生計を立てている。6歳、10歳の兄弟と同様な境遇の11歳の少年は、しかし、楽しそうだ。冒険は10歳と11歳の少年がポーランドへ行く計画を立てたことから始まる。その時点で6歳の弟は仲間外れ。だが、置いていかれてなるものか、と大きめなズボンをずり下げ、前歯の抜けた顔で必死に兄たちを追いかけていくところから物語は俄然面白くなる。 監督はドロタ・ケンジェジャフスカ。一昨年公開され、単館系映画としては最大のヒットとなった『木洩れ日の家で』の監督である。今回は3年ぶりとなる新作。『カラス達』(’94)、『僕がいない場所』(’05)等でもそうだったように、本作も子どもたちの世界を優しくさりげない視線で見つめている。が、しかし、一本の国境線によって隔てられた社会の齟齬をさらりと描いているところはなかなかの妙手だ。なんとなく地味な印象を持つポーランドだが、映画監督となると伝説化した人物を大勢輩出している。アンジェイ・ワイダ、ロマン・ポランスキー、クシシュトフ・キェシロフスキ等々。アンジェイ・ワイダに指導を受けたアグニェシュカ・ホランド(『ソハの地下水道』)、そして、巨匠たちの卒業校でもある名門ウッチ国立映画大学で学んだ本作のドロタ・ケンジェジャフスカ監督。巨匠たちの系譜は脈々としてつながっていると見た。 本作に戻る。少年たちは大変な思いをして、越境に成功。憧れのポーランドの原っぱを駆け、川で身体を洗い、寝転がって高い空を眺め、解放感に胸を躍らせるが、ポーランドで暮らすことは叶わない。亡命以外の越境者は軍に通報され、送還されることが決まっているからだ。少年たちの命がけの冒険は失敗に終わる。なのに、後に残るこの爽やかさはどうだ。少年たちの来た道を戻っていく護送車。その車内で、少年たち、特に、6歳の弟は口を尖らせて文句を言う。しかし、観客は文句なんて言わない。こんなにドキドキさせて楽しませてくれる映画に文句などつけたら罰があたる。 (フリーライター) ※『明日の空の向こうに』は、1月26日(土)より、新宿シネマカリテほか全国順次公開。 |
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