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評者◆秋竜山
無駄使いは敵である、の巻
No.3094 ・ 2013年01月19日




 「無駄なテーコーはやめよ!!」と、いう言葉は、あまりにも有名すぎる。それにしても名文句だ。西成活裕『無駄学』(新潮選書、本体一〇〇〇円)を読む。
 〈無駄とは何か。この言葉をきちんと定義するのは難しい。人によって無駄と感じるかどうかは異なるし、一見無駄なものに見えても、いつかは役に立つことがあるからだ。しかし我々は日常生活でほぼ毎日のように無駄という言葉を使っている。それほど重要で、それでいて曖昧な言葉はなかなか他にはない。〉(本書‐まえがき)
 部屋に山積みになっている本。下の方にある本は、まず取り出すことは無理。だから無駄本という運命なのか。売れない本を、無駄本大セールとしてやってみたら、無駄本でなくなったということになったとか、ならなかったとか。
 〈また、無駄と似たような意味で使われる言葉として、「損」あるいは「もったいない」がある。これらは無駄とどう違うのだろうか。さらに無駄の反意語は何か、と聞かれて、すぐに答えられる人はまずいないだろう。私は、文章を書く仕事をしている人に会うたびにこの質問をしてみるが、みな考え込んでしまう。そしてこれらの疑問の答えは、手元にある「広辞苑」を見ても載っていない。実は我々は無駄という言葉をきちんと理解していないのではないだろうか。〉(本書より)
 無駄という言葉ですぐ連想するのが、無駄使いである。お金の無駄使いだ。昔の親は、「無駄使いをしてはいけない」と、子にいった。子は思った。なんだい!! お小遣いもないのに、なにが無駄使いだ!! それでも、無駄使いのいましめを守って、竹筒をチョキン箱にして置いたものだ。
 〈まず気がつくことは、無駄という言葉は、時間、資源、労力、お金、命、といった貴重で価値があると考えられるものが、「有効に使われていない」あるいは「失われてしまったとき」に使うということだ。(略)「お金に換算できるもの、つまり時間、労力、資源などが有効に使われなかった」と気がついたときに無駄という言葉を使う。〉(本書より)
 もう、どうにもならないのか日本の大不況。その原因の一つが高齢者がためこんでいる多額なタンス預金だという。使わないからだという。これには腰をぬかすほど驚いた。本当にお年寄りがそんな大金をかくし持っているのか!! ということだ。間違いなくお金を持っているだろうと考えた時、それを使わせようとしている、ということだ。高齢者はなにをもってお金をたくわえているのか。それは、年をとったらお金しかたよりにならないからだ。これを使えということは、本人にしてみれば無駄使いでしかないということだ。無駄使いをした後に、なにが残る。たよるものがないというヒサンな最期となる。そのためにも、死んでも使ってたまるか!! というのであると思う。使う時は死んでからだ!! とも、いえるだろう。それにしても、お金というものは、あるところにはあり、ないところにはないというものである。いまのお年寄りも、子供の頃、親にきびしく無駄使いをしてはいけない!! と、いわれて育ってきた。そして、今の時代。無駄使い精神は生き続けているのである。無駄使いは敵であると、ね。







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