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評者◆秋竜山
夜が主役?、の巻
No.3093 ・ 2013年01月12日




 乾正雄『夜は暗くてはいけないか――暗さの文化論』(朝日選書、本体一三〇〇円)を読む。もし、質問されたとする。「夜は暗くてはいけないのか」。ハテ? どー答えたらいいのだろうか。「昼が明るいんだから、夜は暗くてもいいんじゃァないですか」と、答えたとしても、なにか、当たり前すぎて、子供っぽい答えかたのような気がしないでもない。でも、いろんな答えのあるなかで、これが最後というか究極の答えのようにも思えてくるものだ。「夜は自然の法則にしたがって、暗いほうがいいんじゃァないですか」とか、「夜に暗くならなくて、いつ暗くなるんですか」、なんて、またもとにもどって答えたりする。要するに、暗くなくては困るけど、明るくなくても困るということか。この本のタイトルは非常にむづかしい問題点を秘めている。
 〈イギリスの新聞には、天気予報の欄の中に、「タイムズ」ではHours of darkness、「ガーディアン」ではLighting‐upのような項目がある。そこには各地の日没から日出までが、たとえばLondon 9.12pm to 5.02amのように書いてある。え?日本の新聞だって書いてありますか。それはそうですが、書き方がちがうでしょう。イギリスの新聞でちがうのは日出が先ではなく日没から日出へと時間が書いてあること、照明の点灯時間を示すという目的がはっきりしていること、の二つである。〉(本書より)
 日本の新聞は、というと。〈日出、日入、月出、月入〉となっている。日本の場合は、雨のふる日は天気が悪い!! のたとえにあるように、昼が気になる。日出から始まって日入りとならないと一日の実感がつかめないような気がする。イギリスの新聞のように日没が先だと、夜が主役のように思える。この日没の同じ太陽が日出に生きて姿をあらわす。日本流の朝日ではじまるとなると、この太陽がどこからかいきなりあらわれたように思えてくる。屁リクツか。それにしても日没が先というイギリス流にはなじめない。子供の頃、こういう歌があった。記憶はおぼろげだが。♪朝はどこからくるかしら、あの山越えて野を越えて、光の国から来るかしら、いえいえそーではありません、それは希望の国から……。子供心に朝が朝日の昇るとともに光の国からやってくる……と、いうことに、信じたりナットクしたりしたものだった。くもり空の雲の上はいつも晴天で雨がふらないんだよ!! と、いわれて、そーいうものか? と思ったりしたものだ。住んでいる土地によっては、朝日が海から昇るのか山から昇るのか、そして夕日はどっちか。ビルの谷間から昇るというのもある。私は海岸育ちであったから朝日は水平線上からであり山へ姿を消していった。夕日が沈んで暗くなるまで少しの時間、うす明るいというか、うす暗がりというか、その時間帯が好きだった。本の活字が読める、そして暗くなっていよいよ読めなくなった時、電燈をつけた。ところで、「夜は暗くてはいけないのか」と、子供に質問してみたい。なんと答えるだろうか。







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