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評者◆黒古一夫
すさまじい受験戦争──中国から見た現代の日本に迫る、短期集中連載・番外編①
No.3092 ・ 2013年01月01日




 ここ華中師範大学外国語学院で、日本近現代文学あるいは日本の文化に関して修士論文を書く大学院生の講義を担当して三ヶ月、次第に分かってきたのは、この大学で学ぶ学生(院生)は超一流とまでは言わないが、かなりのエリートであり、過酷・苛烈な受験戦争を生き抜いてきた戦士だということである。
 彼らがよく口にする言葉に、あの大学は一流だが、この大学は三流、四流だ、というのがある。何を以て一流とか三流と言うのか定かではないが、大学教師の中にも同じことを口にする者がいるので、そのような大学のランク付けは社会の常識になっているのだろう──「平等」を大義とする共産主義社会における「大学ランク付け」、何だかおかしいと思うが、その大学のランク付けの根拠になっているのが、日本のセンター試験と同じような毎年六月に行われる全国統一テストの得点(偏差値)だと言われると、納得させられる。ここでの得点によって進学すべき大学が決定されるので、偏差値の高い(ランクの高い)大学は、これも日本と同じように全国から「優秀」な学生を集めることができる──。
 学生あるいはその親は、将来の就職のことを考えて、少しでもランクの高い大学を目指すことになり、そこからまさに苛烈・過酷としか思えない受験戦争を強いられることになる。一般的に、進学校といわれる高校では(その前段階の中学校でも)朝の六時頃(すさまじい学校では四時半ごろ)から朝の自習・補習が始まり、学校が閉められるのは夜の九時、十時になるという(当然、その間は教師も生徒と同じ時間を過す)。それが月に一度の休日以外は毎日続く。食事は、自宅が学校近くの者は自宅で済ますが、大半が学食で三度の食事を摂り、一家団欒とは無縁な生活を三(六)年間送る。
 韓国の激しい受験戦争については、日本のマスコミも度々伝えているが、如上の受験勉強の実態を知ると、GDPが世界第二位になった中国も韓国に負けず劣らず過酷・苛烈な受験競争の只中にあることがわかる。だからなのか、大学院生たちのレポートや論文を読んで気付いたのは、「暗記力」は抜群なのに、「思考力」「独創性」に欠けていることである。自分の頭で考えないのは、いずれの国の若者にも共通していることだが、その意味で中国の学生も同じ傾向にあると言えるだろう。
(つづく)







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