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評者◆伊達政保
オイラたちの知る女優・馬渕晴子さんの別な面──運動の中にもある日本人による日本人差別、差別された日本人による朝鮮人差別を洗い出す
No.3090 ・ 2012年12月15日




 9月、劇団・発見の会を主宰していた瓜生良介さんが亡くなり、10月には女優の馬渕晴子さんが、そして何と映画監督の若松孝二さんが交通事故で突然亡くなってしまった。皆70代半ばで今後も活躍を期待していただけに、本当に残念でならない。時期や期間は違っても、皆さんにはお世話になっていた。とりわけ若松さんには40年位前から平岡正明さんや布川徹郎氏を介して知り合い、その時々に世話になっていて、今年出版したオイラの著書『現在につづく昭和40年代激動文化』についても、おまえ立派ないい本を出したなあ、と4月に褒められたばかりだったので、愕然としてしまった。
 瓜生さん、若松さんについては、その作品や活動を多くの人が色々な方面から語っていて、これからも語られていくと思う。しかし馬渕さんについては見聞きする限り、女優としてだけしか語られていなかった。ここでオイラたちの知る馬渕さんの別な面にも触れておこう。出会ったのは80年代前半、パレスチナ関係の集会やパーティーだった。その頃は女優だけではなく活動家としても知られていて、多くの運動に参加されていた。ちょうど30年前の82年、イスラエルのレバノン侵攻とPLOのベイルート撤退、サブラ・シャティーラ難民キャンプでの虐殺などで、パレスチナ連帯運動が騒然としていた時期、馬渕さんは別の大きな問題に巻き込まれていった。
 10月24日反戦反核大阪50万人行動「侵略と差別に反対する広場」運営委員会の席上、部落解放同盟大阪府連合会の運営委員から在日朝鮮人運営委員に対して、「朝鮮人舞踏家に“反豊臣の踊り”をやってもらいたい、これは教科書問題で言えば命令」との民族差別発言が行なわれ、解放同盟、日朝共闘、全障連等を巻き込んだ大論争に発展した。あれは差別ではなかったとか、運動内部に差別糾弾を持ち込むなとか、誤った贖罪論的発想だとかの反論に対し、登壇者で運営委員であった馬渕さんは、運動の中にもある日本人による日本人差別、差別された日本人による朝鮮人差別を洗い出し、真の解決を求めるための努力を積極的に行なっていった。その過程でついには革共同両派の代理戦争の様相を呈し、革マル派は機関紙で「性のレベルでのみ一面的に解放され、四十歳をすぎて頭の回転がおかしくなり政治づいた馬淵」と名指しで誹謗中傷した。革マル派に批判されるとは名誉なことではないか。
 翌年に馬渕さんは、経過報告書として『洗骨、10・24反戦反核大阪五〇万人行動「侵略と差別に反対する広場」の民族問題』(洗骨刊行委員会)を出版する。布川氏とオイラたちはパレスチナ行きでバタバタする中、発送を手伝っていた。
(評論家)







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