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評者◆秋竜山
企画の勝利の新書、の巻
No.3089 ・ 2012年12月08日




 万国共通のテーマ・マンガとして有名なのは、無人島マンガだろう。首つりマンガなんてのもあったりする。ひとこまマンガ(一枚マンガ)であるということ。知っている人は知ってるし、知らない人は知らないというマンガである。その中に「画家とモデル」というのがある。画家をなぜマンガにして笑わなくてはならないのか。なぜマンガ家が好んで画家をマンガにしたがるのか。理由はいろいろあるかもしれない。でも、第一にわかることは、画家が芸術家であるからだ。なぜ、芸術家がマンガにして笑えるものなのか。芸術そのものに笑いが秘められているのである。「画家とモデル」で、もっともうらやましい限りなのは裸の女性をモデルにして目の前に立たせて絵を描いているのがショーバイだからだ。それが、芸術だからだ!! なんて、のがマンガ家にはくやしい原因かもしれない(マンガ家というより私としては!! だ)。画家としては大メーワクだろう。元木幸一『笑うフェルメールと微笑むモナ・リザ――名画に潜む「笑い」の誰』(小学館一〇一ビジュアル新書、本体一一〇〇円)では、「笑い」を名画にむけたという点で、企画の勝利だろう。マンガの場合は画家を笑うのが目的であるが、本書は画家を笑おうという意図はなく、ひたすら画家の作品である名画に潜む「笑い」の追求である。画家を笑ったら、マンガになってしまうのか。マンガ本をつくろうとしたわけではない!! と、いうことかもしれない。
 〈この本は、そのような奇襲による美術史である。作戦は、端的にいえば、笑いの美術史。「笑顔」と「笑い」を切り口にして、中世末期、ルネッサンスから17世紀までの西洋美術史を見直してみようと思う。とはいっても、笑顔が描かれている作品だけを分析するわけではない。なぜ笑顔が描かれないのかも、重要な謎である。例えば、成人したキリスト像はなぜ笑っていないのだろうか。あるいは初期の肖像画はなぜ笑っていないのだろうか。〉(本書より)
 画家はまじめくさった顔で芸術作品にいどむ。画家フェルメールとてそーであろうと思う。
 〈17世紀オランダの画家フェルメールの絵には数々の笑顔が登場するが、それらの笑顔が実は一様ではないのだ。幸せを体現する笑顔もあれば、恥ずかしさを示す笑いもある。皮肉な笑い、苦笑い、嘲笑、毒が込められた笑いすらあるのだ。〉(本書より)
 笑っている人物を見て、なにを笑っているのか理由をしりたくなるものだ。絵画における笑う人物にも、笑う理由があるというものだろう。笑いの中での物語である。たとえ、遠くのほうで笑っている人物がいたとしても、その人には笑う理由というものがあってのことだろう。声だけの笑いというものがあるが、絵画ではそれを表現するのは無理かしら。
 〈大笑いは自分を抑えることができない、思慮分別のない人のしるしであるという。また福音書ではイエスは笑ったことがないとされ、それゆえ笑いをこらえられる人は不幸なのだというのだ。〉(本書より)
 そういえば、笑っているイエス像をみたことがない。マンガのイエス像でさえ笑っているのがない。せめてマンガだけでもイエスさまに大笑いさせてあげたいものである。







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