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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3087 ・ 2012年11月24日




めをさました女の子のある晩のものがたり
▼はんなちゃんがめをさましたら
▼酒井駒子 文・絵
 はんなちゃんはちいさな女の子。ある晩のこと、はんなちゃんは、よなかにめがさめてしまいました。おきあがってみたら、となりでねているおねえさんは、ぐっすりとおやすみちゅうです。おねえさん、おねえさんとよんでみたけど、まったくおきるけはいがありません。そのかわり、ねこのチロがおきてきました。
 はんなちゃんはチロといっしょに、にかいのへやからかいだんを下りて、おしっこをしにトイレへいきました。そのあと、おとうさんとおかあさんのへやをのぞいてみると、ふたりともぐっすりとねむっています。
 はんなちゃんはれいぞうこをあけて、ぎゅうにゅうをだしてチロにあげました。さくらんぼがあったので、こっそりとたべました。でも、だれもおきてはきません。おそとをみると、おつきさまがとってもきれいにひかっています。まどのところへいってみたら、いままでみたことのないような、きれいなはとが、ないています。このえほんをみていると、「ホホーホホー」というなきごえが、きこえてきそうです。そして、おそらがしらじらとあけてきました。はんなちゃんはきゅうにねむたくなってきて、おねえさんのふとんのはしっこで、チロといっしょにまるまって、ねてしまいました。
 ちいさな女の子の、だれもしらないある晩のすがたが、ここにはえがかれています。(11月刊、26×22cm三二頁・本体一二〇〇円・偕成社)


秋の色がいっぱいのたのしい工作あそび
▼ドングリトプスとマックロサウルス――コラージュとフロッタージュのおはなし
▼中川淳 作
 ぼくと犬のブッチは、だいのなかよし。ぼくたちのたからものは、えんぴつとおおきな紙です。それをもって、もりのなかへとはしっていきます。いりぐちには、ふとくておおきな木があって、ぼくはごつごつした木のみきに、紙をあてて、えんぴつでごしごしこすりだします。フロッタージュといって、ごつごつ、ざらざらしている物のうえに紙をのせて、えんぴつやクレヨンでこすって、物の表面をうつしとる方法があるんだけど、それをやってみたわけ。シュルレアリスムの画家のマックス・エルンストがはじめた方法なんだって。
 ごしごし、えんぴつでこすっていると、ほらどうでしょう、まっくろのマックロサウルスが紙の上にあらわれました。ブッチがどんぐりをひろってならべていたら、おめめグリグリの、ドングリトプスがあらわれてきました。
 マックロサウルスとドングリトプスは、ぼくとブッチのなかよしともだちになりました。はっぱのふねにのって、みんなでみずうみをわたります。さかなつりだって、だいすき。ぼくはみんなをつれて、おうちでコラージュをしてあそびます。フロッタージュとコラージュがうみだす、秋の色がいっぱい、たのしいあそびがつまったせかいです。(6・20刊、A4判三二頁・本体一五〇〇円・水声社)


今昔物語集の名作があたらしくよみがえる
▼羅生門 
▼日野多香子 文/早川純子 絵
 あれはてた京のみやこに、母にすてられ、ぬすびとにそだてられた、ゆきまろという少年がいました。母はゆきまろとわかれるとき、だいじにしていたヒスイのまがたまを、ゆきまろの首にかけました。それは母のかたみとなりました。
 ゆきまろはぬすびとのおやぶんにひろわれ、おいはぎとぬすみでいきのびます。ある夜のこと、ちいさな池にじぶんをうつしたゆきまろは、あたまに角がはえているのにきづいて、びっくりぎょうてんです。こころを鬼にして、ぬすみをくりかえしてきたゆきまろは、とうとうほんとうの鬼になってしまったのです。もはや、このようにきれいなまがたまをもっている資格はない、そうおもったゆきまろは、池になげてしまいました。
 そんなある日、ゆきまろは羅生門で、老婆のやさしさにふれて、こころが洗われるようなおもいをします。そして、池になげたひすいのことをおもいだし、さがしにいくのでした。
 あたらしいじぶんをもとめて生きていく少年の姿が、のびのびとした迫力のある絵で、ページからたちあがってきます。今昔物語集に題材をとった「羅生門」のものがたりが、あたらしい文と絵でよみがえりました。(8月刊、21×26cm三二頁・本体一三〇〇円・金の星社)


神につぐ第2の創造者コヨーテが大活躍
▼コヨーテのおはなし 
▼リー・ペック 作/ヴァージニア・リー・バートン 絵/あんどうのりこ 訳
 アメリカ南西部の、ネイティヴ・アメリカンやメキシコのひとびとのあいだで語りつがれてきた、コヨーテのおはなしです。コヨーテはオオカミににていますが、オオカミよりもちいさい動物です。
 ひとびとはコヨーテを、もっともかしこい動物だとかんがえていました。なぜなら、人間が文明をつくりだすはじまりとなった火を、人間にあたえたのがコヨーテだったと、いいつたえられているからです。
 コヨーテは天地創造にかかわっているとかんがえられてきました。人間に火をあたえ、火の玉を空高くにおいて太陽をつくり、人間に光と熱をあたえました。
 けれども、大地は厚い氷と雪でおおわれ、ずっと冬のままでした。春と夏と秋が、ほら穴にとじこめられていて、季節の変化がなかったからです。そこでコヨーテは春と夏と秋をすくいだしました。季節がめぐって、人間だけでなくすべての生きものに、めぐみをあたえるようにしたのでした。
 神につぐ第2の創造者とも、トリックスターともいわれるコヨーテのお話が10篇おさめられ、アメリカの説話世界がひろがります。(10・7刊、A5判五六頁・本体一五〇〇円・長崎出版)


山おくでそだった子ども時代の思い出
▼わたしが山おくにすんでいたころ 
▼シンシア・ライラント 文/ダイアン・グッド 絵/もりうちすみこ 訳
 わたしはちいさいころ、山おくにすんでいた。炭鉱夫のおじいちゃんは夕方、仕事からかえると石炭のこなでまっ黒だった。黒くないのはくちびるだけだったけど、そのくちびるで、わたしにただいまのキスをした。おばあちゃんは夕ごはんのテーブルに、焼きたてほかほかのとうもろこしパンと、豆のシチュー、オクラのフライをつくってならべてくれた。
 電気も水道もなく、けっして裕福ではなかったけれど、わたしは愛情につつまれてそだった。林のなかの池にドボンととびこんで泳いだり、かえり道にはクローフォードさんの店によってバターを買ったり。井戸に水をくみにいって、ブリキのたらいのお風呂にはいった。体をかわかしていると、おばあちゃんがあたたかいココアをつくってくれた。退屈なんてしなかったし、とてもたのしいくらしだった。
 そんな子どものくらしが、絵本になりました。作家のシンシア・ライラントが子どものころにすごした、アパラチア山脈のクールリッジですごした日々の思い出からうまれた、ライラントのデビュー作です。(10月刊、26×20cm三二頁・本体一四〇〇円・ゴブリン書房)


若い魔法使いのカップルがたんじょう
▼ボリガペッパとゼラ──魔法使いの少年の旅 
▼小薗江圭子 作/大島まどか 絵
 「この広い野原いっぱい」の作詞者として知られる小薗江圭子さんの遺作に、アメリカで活動するミュージシャンの大島まどかさんがデザインをよせています。主人公は魔法使いのボリガペッパ。魔法使いではあるけれど、歌やおどりが下手で、「頭脳明晰」とは正反対の、自信のない男なんです。
 いまさら魔法使いをやめて演劇青年になることも、ボーイさんにくらがえすることもできません。でも、そんなボリガペッパのところに、歌やおどりが上手で、とってもすてきな魔法使いの娘ゼラがやってきます。ふたりはシンデレラ姫公演をみにいきました。こうして若い魔法使いのカップルがたんじょうする、夢と希望のメッセージです。(10・24刊、A5判一〇六頁・本体一五〇〇円・平凡社)







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