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評者◆黒古一夫
大学院院生たちの読み書き能力──中国から見た現代の日本に迫る、短期集中連載③
No.3085 ・ 2012年11月10日




 私が武漢に着いたのは九月三日(土)、翌週の月曜日から担当する大学院(日本語科、三年制)の授業が始まった。一年生十五人、二年生二〇人、三年生十五人、前回にも記したように全員が「日本近現代文学」と「日本文化論」「日本語論」で修論を書く予定になっているが、「文学」を専攻する院生が各学年共に圧倒的で、今年の三年生は一人を除いて十四名が「文学」を専攻している。
 「楚天学者」(長老学者とか特別招聘教授という意味だという。武漢が省都の湖北省独特な制度のようで、私の経費は大学ではなく省の予算で支払われる)として招かれた私の役割は、「日本近現代文学」を研究することの意味や方法を院生たちに教えるということで、その要請に基づき一年生には「近代文学概論」(日本の近現代文学に関する基本的知識を講義)、二年生には「近代文学演習」(内容は、「近代文学概論」とほぼ同じ、基本的知識の確認)と「戦後文学ゼミ」(明治から昭和戦前までについては、かなり詳しく学んでいるが、戦後文学・現代文学についてはほとんど触れられていない)、修論執筆を控えた三年生には「論文指導」、という科目を新たに設定し、指導を始めた。
 授業を始めてみて気付いたのは、確かに「日本近現代文学」に対する知識や資料(参考文献)の集め方、あるいは論文の書き方は不十分であるが、「話す能力」は少し劣るとして、日本語を読む能力、書く能力に関しては大変「優れている」ということである。これは「日本文学科」の主任であり、中島敦研究で文学博士の学位をとった李俄憲教授が、毎年一年生に課している「読書日記」(中国語で書かれた全四冊の「中国文学史」と全二冊の「外国文学史」を通読して、日本語で五〇万字~八〇万字の読書記録として提出するもの)の結果だと思われる。このような課題設定は、中国全土でもこの大学だけでやっていることのようで、日本語の「読み・書き」能力が確実に向上する方法として、日本においても、「日本語教育」や留学生対象の「文学教育」に役立つのではないか、と痛感している。
(つづく)







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