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評者◆秋竜山
屁のくささと笑いの因果関係、の巻
No.3083 ・ 2012年10月27日




 概して、ひとり者の屁ほどつまらなくて、くだらなくて、面白くなくて、笑えない。と、昔からそういうことになっている。本当にそうだろうか。ギモンである。私もかつて、ひとり者時代をオーカしていた時があった。下宿の安アパート。屁もひった。十回の内、一回か二回はひとりで笑った。おかしいから笑ったのだろう。においについてもいえることは、自分の屁のにおいはいいにおいであるということだ。それにくらべ、他人の屁のにおいは、「アレは、いったい何だ!!」と、いいたいくらい、くさい。鼻もまがる。そして、自分の屁との違いは、他人の屁をまのあたりにしたら、十回の内に十回は笑える。私がここでいいたいのは、屁というもののくささと笑いについての因果関係であるが、必ずしもくさくなくても笑えるものか。それにしても、他人のすかしっ屁ほど笑いどころかフユカイなものはない。塩田清二『〈香り〉はなぜ脳に効くのか――アロマセラピーと先端医療』(NHK出版新書、本体七四〇円)を読む。残念ながら屁とにおいと笑いについては、ふれてはいなかった。
 〈においの刺激と脳神経の可塑の関係について〉(本書より)
 興味深い、まじめな本である。脳は〈香り〉にビンカンである。鼻を通してか。
 〈スウェーデンにシュール・ストレミンダという発酵させたニシンの缶詰があります。強烈な腐敗臭に近い発酵臭で、「世界一くさい缶詰」と言われています。また、韓国のホンオ・フェという、冷暗所でエイを発酵させた刺身はきついアンモニア臭がして、慣れない私たちが口にすると刺激でむせてしまうほどで反対に、私たち日本人がおいしいと感じる納豆やくさや(これは苦手な人が多いかもしれませんが)のにおいを嗅ぐと、多くの外国人は思わず鼻をつまみます。〉(本書より)
 この世界の二大くささについては面白く笑えさえすれども、自分でこのにおいをかいでみたいとは思わない。こういうものがあるというだけわかれば、それで充分満足する。
 〈そもそも、なぜ「くさい」と感じるものを食べるのでしょうか。ヒトが「くさい」と感じる食べ物のにおいの多くは、食中毒を起こす腐敗臭です。腐敗臭も発酵臭もタンパク質の変性によって発生し、ヒトはこの二つを嗅ぎ分けています。おそらく「毒」ではない発酵臭については、何世代にもわたってこうした「くさい食べ物」のにおいを嗅いでいるうちに慣れていき、そのにおいが気にならなくなる神経の可塑性があるのではないかと考えられます。〉(本書より)
 脳というものは、くささに慣れるということがわかった。
 〈ヒトの脳には「危険かもしれないけれど、とにかく生きるために食べる」という「がつがつ遺伝子(greedy gene)」が発現しており、まず生きるために食べるということが優先されるのでしょう。〉(本書より)
 よく食い意地がはっている、なんていうが、これも脳の生きるための命令であるようだ。その前の段階では、腹の虫が脳に指令するのだろう。グググッと腹の虫が鳴く。「なんでもいいから食べたい。くさい物でも食べたい。なんとかしてくれ」と、腹がすけば腹の虫はいつでも鳴く。そういえば、くさい物にはフタをしろ!! って、ことわざがあった。フタをしないとクサ味が逃げてしまうからという意味ではないことは間違いない。







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