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評者◆秋竜山
悲しみの驚きはゴメンだ、の巻
No.3082 ・ 2012年10月13日




 ナンセンス漫画は、驚きの後にくる笑いである!! なんて、答えている。ナンセンス漫画ってなんですか? と、聞かれるたびに、そう答えているのだ。驚きが大きければ、それだけ大きな笑いとなるわけだ。「と、いうと、このナンセンス漫画は、驚きが小さいってことですね、その分、笑いも小さい」なんて、いわれたことはないが、もし、いわれたら、どーしましょう。「ギャフーン」と自分がひっくりかえるしかないか。石川幹人『人は感情によって進化した――人類を生き残らせた心の仕組み』(ディスカヴァー・トウェンティワン、本体一〇〇〇円)では、人間の感情を探る。感情のない人間はいないだろう。感情のない人間がいたとしたら、「感情のない感情」なんて、ことになるのか? いずれにせよ人間は感情から逃れることはできないだろう。人間は感情の動物である。本書で(私の)もっともチューモクすべき項目があった。〈驚きと好奇心〉という章である。「なんだ、これはナンセンス漫画の解説そのものではないか」(と、いうと著者にお叱りをうけるかもしれないが)つまり、そーいうことである。〈驚きが笑いに転化する〉と本文にある。これだけで、ナンセンス漫画のすべてを解明していってよいだろう(あくまでも私の考えとして)。
 〈「驚き」という感情は、予想と異なる事態になったときに現われる興奮状態です。その事態によって否定的感情にも、肯定的感情にもなります。思わぬ危険な状態になれば恐れに、ケガをしてしまったら悲しみに、よい状態になればうれしさや笑いに転化します。〉(本書より)
 うれしい驚き、笑える驚きということか。驚きがまず先にあって、その後に笑うだろう。いくらなんでも、笑いがあって、その後に驚く、なんて人はいないだろう。ナンセンス漫画とは、なんだろうと思う人に、この本を読んでいただきたいものである。
 〈人間は近い将来を予測しながら生きています。環境に変化が多ければ、その予測がはずれやすので、日々驚きの連続となります。その意味で「驚き」は、新しい環境に順応しようと準備とも言えます。また、他者の驚きが察知できれば、それによって他者の内面が推測できます。「驚き」は社会的感情でもあるのです。〉(本書より)
 〈「驚き」は社会的感情でもある〉ということは「ナンセンス漫画は社会的感情でもある」ということか(調子よすぎる)。ソーテー外の驚きの時代のような気もする。悲しみの驚きはゴメンだ。笑わせてくれる驚きばかりの世の中になったら、なんてステキだろう。
 〈最近こうした体験は「アハ体験」と呼ばれ、注目を集めています。(略)アハ体験は、だじゃれと似ています。もやもやとした思考の状態が、スッキリとした視点で整理されるのです。そこには、「はっ」とした驚きがあり、つづいて、笑いが湧きあがってきます。(略)アハ体験やだじゃれにともなう心の動きは、コミュニケーションの必要性から進化してきたもので、狩猟採集時代の協力集団につちかわれた「草原由来」だと考えられます。〉(本書より)
 アハハハと、笑うのを「アハ体験」。クスッと笑うのを「クス体験」か。







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