書評/新聞記事 検索  図書新聞は、毎週土曜日書店発売、定期購読も承ります

【重要なお知らせ】お問い合わせフォーム故障中につき、直接メール(koudoku@toshoshimbun.com)かお電話にてバックナンバー・定期購読の御注文をお願い致します。

評者◆編集部
こどもの本棚
No.3079 ・ 2012年09月22日




魔法にかかった六年三組生徒たちの12ヵ月
▼学校の12の怖い話
▼島崎友樹
 朝読の本を借りに図書館へ行った六年三組の田中ヒロシは、棚から一冊のうすい本を手にとった。『学校の12の怖い話』という本。開いてみると、バラバラと音がして、最初の一話分の文字が、ぜんぶページからこぼれ落ちてしまった。担任で、魔女といううわさの、千田先生に知れたらどうしよう。学校が終わり、家に帰って恐る恐る本を開くと、文字がワアワア動き出した。ヒロシはバラバラと落ちた文字を必死に拾い集めて、文字を本に押し込んだ。でも、いくらやっても収まらない。どんどん落ちていく。ああ、もうだめだ。ヒロシは本を捨てにいった。するとどうだろう。文字人間が、本を持って追いかけてくるじゃないか。ああ、もうダメだ――。
 新学期が過ぎ、夏休みが終わり、年を越して、もう学年末。ヒロシはあれ以来、本を大事にして、朝読もまじめにとりくんだ。そして卒業式。今日で六年三組ともお別れのとき。教室で千田先生は言いました。「先生のこと、陰では魔女だってウワサしてたでしょ?」。魔法にかかった六年三組の生徒たちの12ヵ月、12の怖い話が始まります。(7・24刊、新書判一六八頁・本体一三〇〇円・長崎出版)


ばらばらになって旅に出たバナナの3姉妹
▼バナナンばあば
▼林木林 作/西村敏雄 絵
 バナばあ、ナナばあ、ナンばあは、バナナの3姉妹。いつもひとつにつながって、なかよくくらしています。でも、ある日、ならんでテレビを見ていて、チャンネルあらそいをして、けんかになってしまいます。バナばあはうたばんぐみ、ナナばあはニュース、ナンばあはじだいげきが見たいって。みんなではらをたてて、ぷいっとよこをむこうとしましたが、あたまのうえがつながっているので、おなじほうしかむけません。
 あるひ、3人はならんでにわをみていて、またけんかになりました。バナばあはおんせんに、ナナばあはくだものやに、ナンばあはみなみのしまにいきたいって、それぞれすきなほうへいこうとしたので、とうとうピシーンときれてしまいました。3人はそれぞれ、ちがうところへ旅にでました。
 さて、3姉妹はどんな旅をしたのでしょう。いえにもどってきて、みやげばなしに、はながさきます。もう、ひとつにつながっていなくても、やっぱりみんないっしょがいいねえ。そんなバナナの3姉妹のおはなしです。(8・20刊、A4変型判三二頁・本体一三〇〇円・佼成出版社)


絵本画家ホフマンが孫のために描いた宝物
▼グリムの昔話 くまの皮をきた男
▼フェリクス・ホフマン 絵/佐々梨代子・野村泫 訳
 スイスの代表的な絵本・挿絵画家のフェリクス・ホフマンさんは、グリムの昔話のすばらしい絵本を作ってきました。そして晩年になって、4人の孫のためにグリムのお話をかたり、手描きの絵本を作りました。これらの絵本をホフマンさんは「子どもたちの宝物」と称しましたが、なかでも『くまの皮をきた男』は、最晩年の作品だといいます。孫のために描いた手作り絵本をもとにして、この本ができました。
 あるところに、兵隊にとられた一人の男がいました。兵隊にはてっぽうが一丁あるきりです。そのてっぽうひとつを肩に、世のなかへ出ていくことにしました。あるとき、一人の男に出会います。男の正体は悪魔でした。悪魔は男に言いました。七年のあいだ、身体を洗わず、ひげにも髪にもくしを入れず、つめも切らず、祈りもせずに生きのびたら、おまえを金持ちにしてやろう、と。兵隊は悪魔と取引をし、熊の毛皮を着せられ、「くまっ皮」と名のって放浪の旅に出たのでした。
 一年たち、二年たち、三年たって、ばけものどうぜんの姿になった男は、四年目にある宿屋に入っていきます。そしてそこで、一人の老人に出会うのです。さて、この先、男の行くさきに待っていた運命とは……。素朴なぬくもりにみちた、グリムの昔話絵本です。(7・25刊、31cm×22cm三二頁・本体一四〇〇円・こぐま社)


くだものの木をまもってオレゴンまで冒険はつづく
▼りんごのたび――父さんとわたしたちがオレゴンにはこんだリンゴのはなし
▼デボラ・ホプキンソン 作/ナンシー・カーペンター 絵/藤本朝巳 訳
 父さんは、リンゴをそだてるのが、だいすきだった。わたしたち一家が、すみなれた土地をはなれ、新しい土地・オレゴンにいくことになったとき、だいじにそだてたリンゴの木を、父さんはどうしてもおきざりにすることができなかった。そこで、大きなはこを2つこしらえ、がんじょうな馬車にきっちりはめこみ、土を入れて、そこにくだものの苗木をぎっしり植えた。だいじにそだてた、くだものの木。それからリンゴにモモ、ブドウにナシにサクランボの苗木ものせた。
 こうして、わたしたち一家は旅に出た。旅先では、たいへんなことばかり。プラット川では、いかだを組んで、苗木をつんだ馬車をのせ、川をわたった。でも、重すぎていかだが沈みそうになる。「だいじな木をおぼれさせてなるものか!」。みんなで必死にバシャバシャ水をけって、ようやく向こう岸に着いたと思ったら、こんどはすさまじい風におそわれた。「ブドウをまもるんだ、モモをまもるんだ!」。みんな服をぬいで、木にかぶせて必死にまもった。
 わたしたち家族は、ぶじオレゴンにたどり着けるのだろうか。だいじにそだてた木を、オレゴンのふかふかの土にうえるまで、まだまだ冒険はつづきます。(8・28刊、23cm×29cm三四頁・本体一五〇〇円・小峰書店)


おいしいおべんとうをつくるぞー
▼べんとうべんたろう
▼中川ひろたか 文/酒井絹恵 絵
 ダダダダーン。ぼくはべんとうべんたろう。だいすきなエリーゼのために、おいしいおべんとうをつくるぞー。そういきおいこんだべんたろうは、べんとうのしょくざいをあつめに、とびたった。
 まずは、おいしいごはん。おいしいおこめは、にほんのでんえんでとれる。だから、にっぽんのでんえんに、ひとっとび。
 べんたろうは、にほんのうつくしいでんえんふうけいに、うっとりとみとれました。そこでべんたろうは、いねかり、だっこくからはじめます。さいごは、おかまでたいて、ダダダダーン。おいしいごはんのできあがり。
 さて、つぎ。おべんとうのおかずといえば、たまごやきですね。たまごをさがして、ロシアのみずうみにひとっとび。はくちょうのみずうみにとうちゃくです。
 はくちょうのたまごやきをつくって、おべんとうばこにつめて、できあがり。
 べんたろうは、さらにおちゃをさがしに、ぱんをさがしに、ウィンナーをさがしにあっちへとんで、こっちへとんで。ついに、おいしいおべんとうの、できあがり! ダダダダーン。ところで、だいすきなエリーゼは、よろこんでくれるのかしら。(9月刊、24cm×24cm三二頁・本体一二〇〇円・偕成社)


イエスさまのもとにたどりついたこひつじ
▼てんしとこひつじ――クリスマスのおはなし
▼ソフィー・パイパー 文/クリスティーナ・ステファンソン 絵/女子パウロ会 訳編
 ひつじかいのベンがかっているひつじのなかに、いちばんちいさなこひつじがいました。いつもベンにくっついて、どこにいくのもいっしょ。あるひのこと、こひつじはベンとひつじたちからはなれて、ベツレヘムにむかってはしりました。そっちのほうが、おもしろいことがあると、ふとおもったからです。ベンはこひつじをひっしにさがしましたが、みあたりません。とっぷりとおひさまがしずんで、あたりはだんだんくらくなっていきます。こひつじはみちもわからなくなって、いばらだらけのあなにおっこちてしまいました。
 あたりはもうまっくら。けもののうなりごえや、ふくろうのなくこえもきこえて、こひつじはどんどんこころぼそくなっていきます。そのとき、そらからてんしがやってきて、「きみ、どうしたの?」とたずねました。「いっしょにおいで。わたしは、きみにあんぜんなところをしっているよ」。てんしはこひつじを、ベツレヘムのヨセフさまとマリアさまのもとにつれていきました。そのうまやでは、ちょうどイエスさまがうまれたばかりでした。そこへ、ベンがやってきて、イエスさまのそばにいるこひつじにあうことができました。みんなにっこり、あたたかいクリスマスのおはなしです。(10・1刊、23cm×23cm二八頁・本体一二〇〇円・女子パウロ会)







リンクサイト
サイト限定連載

図書新聞出版
  最新刊
『新宿センチメンタル・ジャーニー』
『山・自然探究――紀行・エッセイ・評論集』
『【新版】クリストとジャンヌ=クロード ライフ=ワークス=プロジェクト』
書店別 週間ベストセラーズ
■東京■東京堂書店様調べ
1位 マチズモを削り取れ
(武田砂鉄)
2位 喫茶店で松本隆さんから聞いたこと
(山下賢二)
3位 古くて素敵なクラシック・レコードたち
(村上春樹)
■新潟■萬松堂様調べ
1位 老いる意味
(森村誠一)
2位 老いの福袋
(樋口恵子)
3位 もうだまされない
新型コロナの大誤解
(西村秀一)

取扱い書店企業概要プライバシーポリシー利用規約