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評者◆秋竜山
俳句が先か俳句入門書が先か、の巻
No.3078 ・ 2012年09月15日




 俳句を作る人が多い、どころのさわぎではない。頭の中は五七五と数字が踊る。では、絶対わからない問題として、「一」とはなにか? わからなくていいんです。一枚マンガとかヒトコママンガのこと。一枚マンガがあまりはやらないのに対して、五七五があまりにもはやりすぎるのはナゼか。これは社会問題、いや文化問題というべきかもしれない。俳句とマンガを一緒にすること自体間違っているかもしれない。俳句には俳画というものがある。俳句入門書とか俳画入門書が書店に並ぶのは、売れるみこみがあるからだろう。俳句が先か俳句入門書が先か。千野帽子『俳句いきなり入門』(NHK出版新書、本体七八〇円)では、〈本書は、まったくの俳句未経験者、あるいは「俳句って年寄り臭い趣味でしょ」と思いこんでいる人、つまり俳句の「外」の人を読者に想定している。〉と、いう。俳句など一度も作ったことのない、どころか俳句が五七五であることすら知らない人に向けての入門書ということかしら。ド素人向け。変なリクツや知ったかぶりをいいたがる人よりもド素人の方が上達しやすいのかもしれない。
 〈人間の「言いたいこと」は数種類しかない。それを一七音に入れたら「私を見て」一種類になる。そんなもの作者以外読まない。いっぽう「言いたいこと以外のこと」は無限だ。俳句は自分の意図にではなく言葉に従って作るものだ。だから自分で思いつかない表現が出てくる。自分の発想の外側に着陸できる。〉(本書より)
 夜空の月を見て、大いに感動する。これを一七音にしなくてなるものか。なんてのは間違っているのかしら。
 〈坪内稔典さんも言うとおり、感動したから書くんじゃなくて、書いたから感動するのだ(『坪内稔典の俳句の授業』黎明書房、一九九九)。〉(本書より)
 つまり感動する前に俳句をひねりだす。そのひねりだした自分の俳句に感動することだ〓 と、いうのかな。これはむずかしい。月を見ると、感動そのものであり、どうにかしなくてはと思うのは人情というものだ。そして、今、この瞬間に自分になにができるか? と、いったら、俳句以外みあたらない。そーいうわけで、月には感動できるが、自分の作った俳句に感動したくてもできるわけがない。と、いうのは間違いであって、感動できるものを作らなくてはいけないということかもしれない。そして、
 〈「自分」なんて全員同じだが「言葉」は無限だ、と思える人は俳句に向いてます。〉(本書より)
 この意味はド素人には勇気をあたえてくれる。「ヨシ、やってみよう」と、いう気を起させてくれる。
 〈無理に「言いたいこと」にこだわると、「自分の心に正直ならそれでいい」と考えて、文法・語法からずれた言葉をうっかり使ってしまうことがある。これは恥ずかしい。「自分の言葉で表現しろ」なんて言うけれど、言葉は本来他人のもの。私たちは全員それを借りて使っている。〉(本書より)
 言葉は自分のものと思っているものにとって、ちょっとしたショックである。
 〈「言葉より自分のほうが偉い」人は無理に俳句なんかやらなくていい。〉(本書より)
 私は、どっちも偉いと思うのだが……。







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