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評者◆小嵐九八郎
読んで共に悩みたい──友常勉著『戦後部落解放運動史――永続革命の行方』(本体一三〇〇円・河出ブックス)
No.3078 ・ 2012年09月15日




 恥ずかしながら、去年、反原発のデモに行ったのは二回、今年の年賀状に学生運動の先達から「学友諸君! 経産省前へ」と記されていて、よっし、今年は、原発推進の阿漕なる居直りの東電と国家を串刺しにと決心をしたのだが、悲しいですわな、花鳥風月を愛する自称歌人の性が出て、雪見をしての丘登りの最中にすってんころりん。腰骨に打撃を受けて二カ月は身動きできず、やっと三月下旬に経産省前のテントに行き僅かなカンパと激励、七月になって、ビビリストなのでお巡りさんに腰を蹴られるのを怖がりながら首相官邸付近の金曜集会へ、そして代々木公園の集会へと出かけた。
 見たり聞いたり報道で御存知の通り、60年代とはまるで別の、個性ある、67才の老人も危険をあまり感じない、でも、かなり根強い力がある集会だし、デモなのだ。そして気になるのは国家による無視であり、あるいは政局に影響を与えるのは確かだが権力の交代が見えてこないこと。息の長く、粘り強いものが必要なのだろう……けれど。
 という時に、ある本の「あとがき」から捲ったら、東日本大震災と原発の事故の一年の経験から著者が「政治権力の奪取を自己目的化せず、不断に国家と交渉し、国家を相対化し、それと対峙する社会運動のあり方を考えざるをえなくなった」とあり、それを〈永続革命〉(ただし、差別論の議論でこの言葉を用いたのは鵜飼哲氏とのこと)としている。
 ある本とは、『脱構成的叛乱』(以文社)を書いた友常勉氏の記した『戦後部落解放運動史──永続革命の行方』(河出ブックス、本体1300円)だ。日本資本主義の先進性と後進性の中での被差別部落のありよう、糾弾と糾弾される側の二項対立から前への萌し、中心と周縁のテーマと、当方がなお頭を抱えている問題にきりり答えている。キム・チョンミ氏のあの『水平運動史研究──民族差別批判』(1994年、現代企画室)以来の画期的な“次”を予感させ、ある意味で“解答”をも示唆している。読んで共に悩みたいもの。
作家・歌人







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