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評者◆秋竜山
「すみません」ですむんだから、の巻
No.3074 ・ 2012年08月11日




 もう、人間の生きられる夏の暑さではない。「すみません」。すみませんでは、すまされない炎暑だ!! そして、誰が「すみません」なんて、いっているんだ。榎本博明『「すみません」の国』(日経プレミアシリーズ、本体八五〇円)を、汗をふきふき読む。
 〈「すみません」という言葉を耳にしない日はない。意識してみると、毎日そこらじゅうから「すみません」という言葉が聞こえてくる。〉(本書より)
 本のタイトルが、ずばりと、言い切っている。〈「すみません」の国〉、それは、日本国である。テレビでは「すみません」と、言って並んで頭を下げる。いったい、いつの頃からなんだ。日本人がやたらと頭を下げたがる国民になったのか。それを見て、なんとも感じない国民になってしまったのか。もう、テレビで頭を下げるのはやめていただきたい。それよりも、ランクの上のやりかたで、しめしてほしい。
 〈ホンネで悪いと思っているかどうかが重要なのではない。タテマエであれ、「すみません」と言うことに重要な意味があるのだ。「すみません」と口にする人物に対して、それ以上責め立てるのは無粋だといった感覚が日本文化の中では広く共有されている。「すみません」と言われることで、抗議や怒りの気持ちも和らぐ。そうした心理メカニズムを悪用した欺瞞的な「すみません」が横行しているのも事実だ。しかし、「すみません」という言葉によって、相手の気持ちが救われたり、体面が保たれたりするといった、利己的でない効用にも目を向ける必要がある。〉(本書より)
 「すみません」と「ビール」の共通点は、「とりあえず」だろう。「とりあえず、すみません」であり、「とりあえず、ビール」だ。〈「すみません」「いえいえ」とは何か〉という項目では。
 〈日本的感覚からすれば、何かあったときには、とりあえずは謝った方がいい。そうした方が、その「場」の雰囲気が和やかになって、ものごとがスムーズに運ぶ。〉(本書より)
 私など、家の中では一度も「すみません」など言わないが、一歩外へ出ると「すみません」の連発である。そして、「いえいえ」と言っていただくのを計算でもしているようでもある。
 〈「すみません」で良好な雰囲気の「場」ができあがると、それを壊すような態度はとりにくくなり、「いえいえ」と言わざるを得ない空気が醸し出される。そして「いえいえ」と言うことでさらに良好的な雰囲気が強化される。〉(本書より)
 「すみません」をこっちから言う場合は、「いえいえ」を期待し、「すみません」を相手から言われた場合、「いえいえ」と言ってしまう。考えてみれば、便利な言葉でもある。「すみません」ですむんだから。「いえいえ」ですんでしまうからである。〈「質問は?」と訊かれたら日本人は下を向く〉というのも、その通りです!! と、言わざるをえない。
 〈「先生が「意見や質問があればどうぞ」のように言っても、日本人学生はほとんど下を向いて黙ってしまいます。下を向くのは、うっかり目があって指名されたら困るからです。〉(本書より)
 そして、〈「暫くお待ちください」と言われたら何分待つか〉という項目がある。「オイオイ!! 暫く待てというから待っているんだが、いったいいつまで待ったらいいんだ」「ハイ、もー暫くお待ちください」。







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