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評者◆小嵐九八郎
“くるい”寸前の悶えを直截に訴える――『死刑囚90人 とどきますか、獄中からの声』(本体一八〇〇円・インパクト出版会)
No.3074 ・ 2012年08月11日
《叫びだし寒満月の割れるほど》大分と前に死刑を執行された人の俳句である。この句のタイトルで法蔵館から古川泰龍氏という僧侶が本を出しているが、句の作者は確実に無実であったと記してある。ごめんなさい、手許に資料がなく、句の主人公の名前が、たしか西氏だったような気がするが曖昧だ。
《罪/何をもって償ふ/穴まどひ》 俳号は牛歩氏、絞首された54歳の時の句である。穴とは墓か。あるいは、絞首台の下の暗がりか。譬喩としてのどでかい罪か。 《綱/よごすまじく首拭く/寒の水》 和え氏の句だ。やはり、執行されている。 冒頭の句は犯人捏造の結果へ“くるい”寸前の悶えを直截に訴える。無実でなくても、幻視ではない国家というどでかい力が殺人を為して良いのか、無制限の殺傷目的の戦争とは違うけれど本質において違いがあるのかどうか。しかし、死刑制を80%ほどの人人が支持しているといわれる現今、当方は非力感に満ちた怒りでへとへとになる。 おい、おい、何もしてねえのに独り善がりに浸って暗くなるんじゃねえよ、本人達の生の身悶えはそんなもんじゃなく熱いよと、静かに伝える本が出た。『死刑囚90人 とどきますか、獄中からの声』(死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90編、インパクト出版会刊、1800円+税)である。 福島みずほという参議院の議員氏が発したアンケートに、監獄側のあれこれの嫌がらせを越えて答えた中身だ。俺達の三派全学連と全共闘の闘いの後退戦をやった連合赤軍、狼グループの死刑確定囚、オウムの幹部達の思いばかりか、戦後“犯罪”史が分かるようになっている。死刑囚の運動時間や所持文書の規制や道義のない懲らしめもリアルに分かる。モノクロでなくカラーで、確定囚の絵画もあり、風間博子氏のどでかく人工的な地底から光を求める絵など凄まじい迫力がある。動転し、魘され、その後に生に希望すら抱く。 暮れを待つまでもなく、今年のノンフィクションの一切を頭抜けるだろう「これだあっ」だ。 (作家・歌人) |
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