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評者◆伊達政保
新たな大衆運動が起こりつつある首相官邸前の抗議集会――52年前の同日・同所、反安保闘争で集まった数万人のデモ隊が国会突入、樺美智子さんが亡くなった
No.3073 ・ 2012年08月04日




 この間、反原発のデモや首相官邸前の抗議集会に参加してきて、新たな大衆運動が起こりつつあることを実感してきている。オイラ自身の経験でいえば、4月頃から参加してきた首相官邸前の集会が、回を追うごとに集まる人数が増え、まるで全共闘運動当初のような感じさえしていた。ついには6月29日、7月6日と十数万の人々が抗議のため集結する状況が生まれた。
 結集軸は反原発、原発再稼働反対というシングル・イッシューであり、個々人の主義主張は別にして、その一点のみで参加するというものである。よって組織の旗、団体の主張は遠慮してもらい、個々人の抗議の場としての行動を今後も継続していくため、参加者には道交法等のルールを守ってもらうというのが、呼掛け主体の首都圏反原発連合の考え方であった。オイラも現時点では妥当な方針だと思う。こうした呼掛けの在り方、またツイッターなどによる呼掛けの手段により、年代を超え、40年以上前にはデモに参加していた60代以上の人たちや、初めてデモに参加する若い人たちが増え続けていった。
 しかし、数千人規模であればこうした内容で対応できたものが、一挙に数万人規模に膨れ上がった時、その対応が難しくなってきたようだ。オイラの目にした6月15日がその分岐点だったように思われる。万単位の参加者が歩道に収まりきれず、車道を埋め尽くしてしまったのだ。52年前の同日・同所、反安保闘争で集まった全学連を中心とした数万のデモ隊は国会突入、樺美智子さんが亡くなり安保闘争を象徴する日となった。旧「新左翼」と現役世代の学生は全学連旗を押し立て、主催者(指導部?)を乗り越え官邸突入をと叫び始め、主催者側も何とか押し止めたものの、以後ツイッターや集会などでお互いの批判が始まり、現場での小競り合いが繰り返されることとなっていった。
 旧「新左翼」側は40年経っても大衆運動利用主義は全く変わらず、主催者サイドに立つ人も安保闘争、全共闘運動をごっちゃにして「新左翼」が全ての運動を駄目にしたと批判する。経産省前反原発テント広場で地道に活動する中高年の人たちは、かつて「新左翼」の人たちなんだけどねえ。日本では「新左翼」運動の継承も総括も、事実関係の認識も全くなされず、負の面ばかりが強調されてきた結果がこうした事態を生んでしまった。しかし今からでも遅くはない。頭を冷やしてノルベルト・フライ著『1968年――反乱のグローバリズム』(みすず書房)を読んで欲しいと思う。ヨーロッパの左派の青年の間ではビートルズの評価は低く、ローリング・ストーンズは高く評価されていた、などとも書いてあるのだ。







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