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評者◆トミヤマユキコ
高く、遠く……シトウレイの見つめる先。
日々是東京百景
シトウレイ
No.3072 ・ 2012年07月28日
▲【しとう・れい】ファッションフォトグラファー、ブロガー。1979年、石川県生まれ。早稲田大学教育学部卒。大学在学中にモデルデビュー、後にフォトグラファーとしても活動をはじめる。ストリートファッション誌などに写真を提供する一方、自身のブログ「STYLE from TOKYO」でもストリートスナップを紹介。「世界で最も影響力のあるファッションブロガー」に選出されるなど、いま最も注目されるファッションアイコンのひとり。
「たとえば、海外から友だちがやってくる、となった時/自分の知りうる限りの情報をもって、東京の魅力を最大限に伝えたいと思う」――アパレル系のショップを中心に、東京中のオシャレなお店が大量に紹介されている『日々是東京百景』(文化出版局)は、著者・シトウレイが、海外の友だちを思いやる言葉からはじまっています。 この言葉からも分かるように、シトウレイというファッションフォトグラファーは「海外向けコンテンツ」であります。彼女の撮る写真、書きつける言葉は、「いまここ」というよりは「ここではないどこか」へと向けられているのです。 思えば、彼女の展覧会は、モスクワで開催されていますし、海外ウェブマガジンや海外ファッションビルの仕事も手がけたことがあったのでした。彼女は、海外の人々がイメージする「日本」を紹介する手腕を高く評価されているのです。元ファッションモデルだった女の子、シトウレイは、フォトグラファーとしてのキャリアを積み重ねるうち、海外の評価軸というものを自分の内に取り込みながら、東京の、そして日本のファッションを見つめる視線を「外国人化」していったように思われてなりません。 視線の「外国人化」……これはまさしくエドワード・サイードの提唱した「オリエンタリズム」ではないでしょうか。海外の人々がイメージする「日本」(オリエント、と言い換えてもいい)を表象するものばかりをピックアップして紹介しているのですから。そう言えば「厳選の8冊」のコーナーで紹介されている彼女お気に入りの書籍も、『陰翳礼讃』『「いき」の構造』『こころ』など、見事なまでの「日本趣味」です。東京をテーマにした本の中で紹介されるのが、関西移住後の谷崎が書いたことで有名な『陰翳礼讃』……こうした選書のユルさにもオリエンタリズムが顕著にあらわれていると言ったら、牽強付会でしょうか。 そんなワケですから、彼女が相手にしているのは「日本らしさ」を存分に体現しているオシャレさん。あるいは「日本らしい」クールでクレイジーなファッションをこよなく愛する人々。それって言ってみれば「ファッション玄人」の方々なのです。ファッション素人にはオシャレなのかそうでもないのかイマイチ判断がつかないストリートスナップについては「わたしが撮ったものを「おしゃれじゃない」という人もいるだろうけど、それは全然気にならない」とシトウレイ本人も言っています。オシャレに憧れ、オシャレへの入門を希望する小僧・小娘には目もくれないとでも言いましょうか……ファッション素人を威圧し、ぐんぐん引き離してゆくのが彼女の流儀。この徹底ぶりが、海外から支持される理由でもあります。 しかし、奇妙なことに『日々是東京百景』は日本語で書かれています。つまり、基本的に日本人向けということです。「いまここ」ではなく、あくまで高く、遠く、上を目指すハズの彼女が、なぜ日本語で書く必要があるのでしょう。バイリンガル仕様にするという道もあったハズなのに(そしたら海外の友だちとやらも読めますしね)。 それはひとえに、この国に潜在する後進を発掘・育成するためではないかと思われます。先頃のAKB48選抜総選挙で「潰すつもりで来てください」と言い放った篠田麻里子よろしく、シトウレイもまた、高い高いファッションの崖の上から、ガッツある後輩を挑発しているのです。ファッションをただ楽しむだけの消費者に構っているヒマはない……これは言うまでもなく『CanCam』のような雑誌が、誰にでも手が届くアイテムで、誰からも愛されるファッションを目指していることとは対極にあります。両者は「宗派」が違い「思想」が違うのです。 ストリートスナップによって「日本」を演出すること。本気で潰しに来る後輩を、やがて新たな海外向けコンテンツとして売り出すこと。目下、それが彼女の使命と申せましょう。やはり、彼女は高く、遠く、上を見ているのです。そして、彼女のストリートスナップを待っているファッション玄人のため、シトウレイは今日も東京の街を走り回っているに違いありません。 (ライター) |
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