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評者◆佐々木中
そして世界は熱く悲しい夏を迎えた――われわれの叛乱はまだ終わっていない
1968年――反乱のグローバリズム
ノルベルト・フライ著、下村由一訳
No.3070 ・ 2012年07月14日
三帝国とドイツ連邦共和国(以下慣例に従って「西ドイツ」と略記する)とのナチス・エリート層の継承についての研究を重ね、われわれ日本語圏の読者にとっては『総統国家』(岩波書店、一九九四年)の邦訳で親しまれるドイツの現代史学者ノルベルト・フライの、訳者の説明によるとどちらかと言えば傍系に属するという本書は、だが平明で簡潔、そして目配り見通しの良さを過不足なく備えていて、あまりに多くの相反する証言と、そしておそらくは党派的・自己弁護的な議論によってその実相はかき曇るばかりだった〈1968〉という世界史的現象にひとつの展望を与えてくれるという意味で、得がたい書物なことは間違いない。
まずその目配り見通しの良さ、だ。フライは本書で、パリにおける一九六八年五月革命の、瞬時にふくらみ見る間に萎んでいった、現出も消滅も茫然とするほど劇的と言う他ないその過程を勢いのよい一筆書きのようにして序章に描いたのち、正当に〈1968〉すべての起源をアメリカ合衆国における公民権運動からヴェトナム反戦運動、そしてそれに続くカウンター・カルチャーの勃興に求める。次に西ドイツの〈1968〉の厚い記述に移り、ナチス・エリート層とその影響力の残存に対する反発、そして過去ナチス協力者であった両親世代への不信というこ... 【現在、図書新聞を定期購読されている方】 から「ご契約者のお名前」「郵便番号、ご住所」「メールアドレス」「ID・パスワード新規取得」の旨をご連絡ください。 【定期購読されていない方】 定期購読契約が必要です。 こちらから をしてください。 |
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