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評者◆ベイベー関根
泣ける! 濡れる! 分泌する! 音楽好き必読!(そうでない人も必読!)――森本ヨシアキ・原作/須田信太郎・作画『淀川ハートブレイカーズ』(本体一二〇〇円・プレスポップ)
No.3064 ・ 2012年06月02日




 ここんとこ、すごく売れてるというわけではないにしても、目ハシのきいてるマンガ好きたちが会うと必ず話題にのぼるのがコレ、『淀川ハートブレイカーズ』だ!
 要はクラブで皿を回したり飲んだくれたりする若者群像を描いたもんなんだが、原作・森本ヨシアキことキングジョーのソウルフルかつブルージーなストーリーテリングと、作画・須田信太郎の、ときにアグレッシヴ、ときにスウィートなドローイングとが、クラブのモイスチャーな空気感、汗のフレグランス、涙のソルティネス、魂のグルーヴを感じさせてくれる、実にフィジカルな逸品を生み出したのだあ!(わざとカタカナ多めに使ってます)
 出てくるのは、音楽が好きすぎて実生活では不器用にしか振る舞えなくなっちゃった人たちばかりで、共感を感じずにはいられないのだが、個人的には、今いちモテずにジタバタしてるフンコロガシちゃんが愛おしいのと、「素振り暮らし」で描かれる、夢を見続けようとする男の生きざまにはヤラれたぜ、と告白しておこう!
 原作を担当した森本ヨシアキは、前述のとおりキングジョーとして、文章・イラスト・バンド・DJなどの分野で活躍していて、本書では、あのラジオ関西の名番組「夜のピンチヒッター」(え、知らないの!! あわててググろう!)でおなじみのロック漫筆家、安田謙一との対談が収録されていて、レイドバックな中にもインテンスな応酬が楽しめるぞ!
 で、作画担当の須田信太郎には、本作以前に『江戸川ハートブレイカーズ』という作品があるんだが、残念ながら今回は読めずじまい(10年に1作ペースの寡作の人なのだ)、そのかわりに入手した『ウルティモ・スーパースター』という作品は、ふとしたことから弱小巡業プロレス団体「るちゃプロレス」にまぎれこむことになってしまった、別に屈強でもなんでもない高校生・三波が、あちこちでこづき回されたり、“自由への闘い”に目覚めてアドレナリンを分泌しまくったりするというもので、ヘボな作者なら「るちゃプロレス」のナゾの中心人物、ウルティモ・スーパースターの内面につい思いはせてみちゃったりするところ、いっさいそこには踏み込まないという勇気ある選択を実践してみせた、マンガならではの楽しさに溢れた傑作にして、おまけにめっちゃ安いのだった!『淀川ハートブレイカーズ』に戻ると、DJたちのお話だけに、とにかく音楽の話題が溢れまくっているのだが、もちろん音楽に詳しくない向きでも、夢をもって生きたことのある人ならきっとこの作品のキモが伝わってくれると思うし、いわんや音楽好きにおいてをや!
 ちなみに、作中ひときわどデカい扱いになっているのが、鈴木茂『BAND WAGON』、くう~、名曲揃いの名盤だ、たまらんぜ!
 そういえば、映画化の話も浮かんでいるという噂を小耳に挟んだけど、うまく進んでくれるといいなあ!
(セックスシンボル)







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