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評者◆竹原あき子
参加者は4日間で19万人に
No.3062 ・ 2012年05月19日




 パリとその近郊の市民にとって楽しみなフェアが二つある。農業フェアと本のフェアだ。48回を数える農業フェア(salon international d’agriculture)は、パリの真ん中に突然田舎があらわれるほど巨大な規模。ワインやチーズはもちろん農産物があり、あらゆる家畜が囲いの中で約2か月暮らし(展示され)、歴代の大統領が牛と一緒にメディアに登場してフランスの農業と農産物を世界に知らせるチャンスをつくる。フランスが農業国であることを改めて前面に出すフェアだ。
 もう一つが32年目を迎えたブックフェア(salon du livre)。入場料金は一般9・5ユーロ(約1000円)、65歳以上は最終日の19日だけ6・5ユーロ、そして19歳以下と、26歳以下の学生は無料、失業者5・8ユーロと、きめ細かな料金設定だ。子ども、学生、そして高齢者を優遇するのは日本でもすでにおなじみになってきたが、失業者にも配慮するところがフランスらしい。失業証明書を見せる必要があるが、当然のこととして入場する若者の姿が頼もしい。
 世界40カ国から2000人の作家、1200社以上の出版社、そして図書関連の組織が参加した。会場では4日間に400回の講演と討論会、4000回のサイン会、そして子どもの遊び場では玩具の組み立て、読み聞かせ会など、盛りだくさんの行事で、会場は読書という静かな行為とは正反対の熱気と騒音に包まれる。
 2012年は、3月16日から19日まで、4日間で約19万人を集めた。農業フェアとブックフェアの共通する特徴は、専門業界の商談の場所でありながら、市民と子どもが遊べる教育の場でもあることだ。図書券(8ユーロ、約800円)を手にした小学生が8人、教員と両親に引率されて会場を歩いていた。3人は現代の文学作品を買ったが、残る5人は漫画。当然、いまはやりの、といってもフランス登場10年目を迎えた岸本斉史著『ナルト』と人気急上昇中の尾田栄一郎著『ワンピース』。図書館に入れるために、学校のある自治体が子どもたちに提供した図書券だった。彼らは疲れれば床に座り、おやつをかじりながら、買ったばかりのマンガを読みふける。
 若者の入場者の数は3万6500人を数えた。1日に約1万人になる。  (つづく)
(和光大学名誉教授・工業デザイナー)







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