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評者◆ベイベー関根
なぜかなぜかの、処女……えーと……作品集たち。――ふみふみこ『女の穴』(本体六一九円、徳間リュウコミックス)、マキヒロチ『旅する缶コーヒー』(本体八〇〇円、実業之日本社マンサンコミックス)
No.3061 ・ 2012年05月05日




 あれ、珍しくここんとこ女性マンガ家が続いてたなあ。そういうつもりでもなかったし、ヒトからいろいろ薦められる女性マンガ家がまたたいてい今ひとつだったりして、冷たくしてたつもりだったんだけど。まあいいや、せっかくだから、もう2冊ほど取り上げとっか! なんとどっちも処女作品集! 出たのはずいぶん前だけど、気にするな!
 一発目は、ふみふみこ『女の穴』! 天才ですね、以上。
 で、すますわけにもいかないのがレヴューの辛いところか……。
 作者は、デビューそのものはそんなに遅くないにもかかわらず、途中で何をトチ狂ったか「西島大介のひらめき☆マンガ学校」に参加した後、『COMIC リュウ』でストーリーマンガ家としてのデビューを飾り、けっこう20代ギリギリになってこの最初の単行本を出した……という、それだけでもひと筋縄ではいかない感じがひしひしと伝わってくるではないの。
 『女の穴』は、主に女子高生とその歪んだ……いや違った、いっぷう変わった〈性〉をめぐって描かれる連作。宇宙人の女の子が担任を誘惑したり、お兄ちゃんが大好きな女の子が怪談に出てくる二口女(ふたくちおんな)になっちゃったり、チビ・ハゲ・デブさらにはゲイという先生になぜか優等生の女の子が粘着したりと、いやもうなんというか、次から次へと噴き出してくる感じで、実に頼もしい。さまざまなタッチやテクニックを駆使したり、意外と作者の関心が過去へも伸びてたりするとこも行く末楽しみといってよかろう! しかし、こんだけ描けて、こんだけもってる人が「西島大介のひらめき☆マンガ学校」で何を学んでたんだろうな?
 さて次。これもなぜかバリバリのおっさん誌『週刊漫画サンデー』に掲載された女性マンガ、マキヒロチ『旅する缶コーヒー』を。あ、こんな名前ですけど、作者女性ですんで。この本、タイトルどおり、缶コーヒーを狂言回し(?)にした連作短篇集で、尾道、ロンドン、中目黒といったさまざまなシチュエーションで、カップル、息子と父親、友達、家族、タクシーの運ちゃんと客、母親と娘、といったこれまたさまざまな人間関係が描かれる趣向。ジャケットからはエキセントリックな印象を受けるかもしれないけど、お話はほんわかハートフル、中の絵はちょっともっさりしたタッチ(笑)で、これがなかなかにいい味なんですなあ。全編読んだ後には、人生まんざらでもないような気にもなるんだから、ついオススメしたくもなろうというもんだ。
 マキさん、デビューは『スピリッツ』らしいけど、たぶんあんまりうまくいかなかったんだろうな。一見地味だけど実力はある人なんで、編集側のうまいリードが期待される。めげずにがんばれ!
 あと、前にここで紹介したアリソン・ベクダル『ファン・ホーム』がメディアなんとか賞(編集部註・文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞)を受賞したそうな、まずはめでたい!







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