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評者◆秋竜山
ちゃんとしたバカになろう、の巻
No.3061 ・ 2012年05月05日




 「バカ」という文字が本のタイトルに入っていると、変に目につきやすいものだ。書店に並べられている本の中でも、「バカ」という文字が目に飛び込んでくる。以前、「人間はバカでできている」なんて書いたこともあったが、「バカは人間でできている」ってことも成り立つだろうか。「バカ!!」「なんだと、バカとはなんだ」「バカだからバカといったんだ」。なんて、やりとりもバカバカしくて面白い。小宮一慶『バカになれる人はバカじゃない』(サンマーク出版・本体一三〇〇円)では、やっぱり、「バカ」が主役になっている。今日は元気だ、やたらと面白い!! と、いう日、奇しくも本書を読んだ。そんな体調であるから、クスクスの連続であった。著者にしてみれば、本書はそんなつもりで書いたものではない!! だろう。
 〈「バカ」がいいことなんて、意外に思われるかもしれません。でも私がいう「バカ」とは、一般的な意味でのバカではありません。自分で「バカ」になれる人のことです。〉(本書より)
 私がクスッとしたのは。「一般的な意味でのバカではありません」と、いう部分です。〝一般的な意味でのバカ〟なんて、やっぱりあるんですよねえ。「一般的な意味での」といういいかたは非常に便利なことばであるように思う。あらゆることに使われる。「バカ」にも、その言葉が使用されたとなると、やっぱり可笑しい。クスッとくる。
 〈一見、「バカ」にしてしまいがちな地味な作業を、なぜ多くの成功者たちが毎日こつこつと続けているのでしょうか。それは、小事こそ大事だということが、彼らの体に染みついているからです。〉(本書より)
 〈一見、「バカ」〉というのが面白い。バカというのは、すべて一見バカであるということだからだろうか。「あなたも、一見バカの部類に属しますね」なんていおうものなら、ぶんなぐられることだろう。
 〈「自分はバカだ」と言えるのは、謙虚さの証です。謙虚だからこそ、自分の足りないところが分かる。自分はまだまだ至らないところがある、と思えるから、「自分はバカだ」と言えるのです。〉(本書より)
 自分はバカだといっている内はいいが、他人から、バカだといわれたら……。アッ、そーか、自分に謙虚だからこそ、他人にもバカといわれても腹が立たないというわけか。当たり前のことかもしれない。しかし、「バカ」というひとことも、口から出るいいかたで相手によくも悪くも伝わるものだ。自分がそーいわれたとしたら……と、考えてみるとよくわかる。しみじみとした口調で、「バカだなァ……」なんて、いわれると、怒るどころか、泣きたくなってくる。しみじみと泣きたくなってくるのである。そして、オイオイ泣いてしまう。「俺もバカだけど、お前もバカだなァ……」なんてのも、思わず苦笑して受け入れてしまうものだ。そんなセリフを言うほうも気分はいいが、言われるほうも同じように気分はいいものだ。バカとハサミは使いよう……と、いうけど、いや、そういう意味ではないだろう。〈ちゃんとバカにならないと〉というのが本書にあった。これが本書のいわんとしていることがらかもしれない。ちゃんとしたバカになろう。それには、やっぱりバカになることだろう。







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