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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3059 ・ 2012年04月21日




◎江戸の子どもたちの
あそび歳時記
▼江戸の子ども 行事とあそび12か月 ▼菊地ひと美
 江戸時代の子どもは、いったいどんなふうにあそんでいたのでしょうか。この絵本は、一月から順番に江戸のあそびを紹介していきます。まずは一月、江戸のお正月は獅子舞、凧あげ、羽根つきなど。いまとおなじですね。獅子舞は、まよけと、ゆたかな実りを祈るいみがあるんですね。男の子は凧あげ、女の子は羽根つきがたのしみでした。それから、ぶりぶりといって、色のついた絵がかかれた筒をひいたり、ふりまわしてあそぶものもあったんです。それから、万歳といって、家々をまわってお祝いのことばをのべたり、歌やおどりをする二人組もいました。
 二月には稲荷神社で初午まつりがあり、春が近づく広場で、春駒や輪ころがしをしてあそびました。三月はひなまつり、五月は端午の節句と、いまにうけつがれる行事に、子どもたちも夢中だったようです。八月のお月見をすぎると、もう秋のけはい。10月になると、こたつ開きがあって、もう冬の準備がはじまります。女の子たちは家のなかであそぶことがおおくなり、ままごとやあやとり、おはじきなどであそびました。一一月は、歌舞伎の役者さんたちの新しい組み合わせがきまる月で、子どもたちも役者さんのまねをして、歌舞伎ごっこでもりあがる季節です。そして一二月は雪あそび、大みそかにはおもちつきの手伝いで、新しい年をむかえます。
 お面や手あそびのおもちゃもたくさん紹介されていて、江戸の子どもたちの日々の楽しみが伝わってくる絵本です。(4月刊、B5変型判三二頁・本体一二〇〇円・偕成社)

◎生きとし生けるものの
「まことの幸せ」を
もとめて
▼宮沢賢治――本当のさいわいをねがった童話作家 ▼西本鶏介 文/黒井健 絵
 日本の歴史上のおもな人物を、絵本と解説でよりよく知ることができる学習シリーズとして好評の「よんで しらべて 時代がわかる ミネルヴァ日本歴史人物伝」。24巻目は宮沢賢治です。宮沢賢治は、よく知られた詩にあるように「雨ニモマケズ」、自分の理想にむかって一直線にあゆみつづけた人だったといいます。人間も動物も自然も、みなひとつになって心をかよいあわせることのできる「まことの幸せ」を、生涯をかけてさがしもとめました。
 一八九六年、岩手県の花巻に生まれた賢治は、子どものころから植物や石ころを集めるのが大好きで、盛岡高等農林学校へ進学し、地質や土の科学調査にうちこみ、そこで学んだことをお百姓のために役立てたいとかんがえました。卒業して学校の先生になったものの、やはりお百姓といっしょにはたらいて、役立たなければいけないと、先生をやめて「羅須地人協会」をおこし、新しい農村社会をつくろうという理想にもえます。けれども、理想と現実のギャップはおおきく、病にたおれてしまうのです。賢治は病気とたたかいながらも、創作活動をつづけました。人びとの役にたちたいという思いは、童話「グスコーブドリの伝記」に実をむすびました。
 賢治の作品世界をりかいするために、とても役に立つ一冊です。(3・30刊、B5変型判三二頁・本体二五〇〇円・ミネルヴァ書房)

◎無間地獄をくぐると
そこには極楽の国
▼地獄と極楽 ▼【地獄】宮次男 監修/【極楽】西川隆範 文/枡田英伸 監修
 地獄とは、いったいどんなところでしょうか。この本をひらくと、地獄の世界がひろがります。さて、ここからは地獄への一本道……。
 「われらは、地獄のえんま王のつかい。おまえを、地獄へつれていく! おまえは、死んだのだ!」といって、牛頭と馬頭がわたしの手をつかみました。そして、死出の山をこえ、三途の川をわたります。わたしははだかにされ、閻魔王のまえに引きだされました。
 「えんま王さま、えんま王さま、わたしは、わるいことはしていません」
 けれど、閻魔王は浄玻璃のかがみをもっていて、すべてをうつしだします。うそをついてもむだです。
 「おまえは針地獄におちよ。おまえのおかしたつみがきえるまで、針地獄におって、つぐないをせよ!」
 針地獄とは、いい子ぶってつげ口をしたり、ほかの人をばかにしてわる口をいったりしたものが、おとされるところです。おとされても、死ぬことはできません。だって、もう死んでいるからです。無間地獄をくるしみぬかないといけないのです。
 では、極楽はどんなところでしょうか。この本には、極楽篇もあるんです。
 「極楽は、きみの心のなかにあらわれる。きみの心が極楽のけしきになるんだ」
 極楽の王さま、アミターユス・アミターバさまのことばは、地獄篇をへたものにはいっそう、ふかくふかくひびきます。(10・1刊、文庫判六四頁・本体一〇〇〇円・風濤社)

◎どんどんへっていく
どうぶつたちはいま
▼だいじょうぶかなあ 森や海――絶滅しそうな動物たちとそのくらし ▼エレナ・パスカリ 文/ティナ・マクノートン 絵/女子パウロ会 訳
 いま世界では、めったにみられないどうぶつたちの数が、どんどんへっているのを知っていますか? ジャイアントパンダやレッサーパンダ、アフリカゾウ、チンパンジー、ユキヒョウ、ヤク、アシカ、ホッキョクグマ、ホッキョクギツネ……。すむところも、たべるものもなくなって、どうぶつたちは生きていけなくなっています。そんなどうぶつたちの世界をたずねてできたのが、この絵本です。
 たとえば、ジャイアントパンダをたずねましょう。ジャイアントパンダは、中国の一部の高い山に住んでいます。でも、人びとがどんどん木を切ってしまって、地面はむきだしになり、パンダの住むところも食べ物もなくなって、もう生きていけなくなっています。パンダがくらしていけるように、パンダの大好物の竹をたくさん植えなければいけません。森もよみがえらせなければ。アフリカゾウも、人間に追い払われてどんどん居場所がなくなっています。人間が畑を広げて、ゾウたちの動きまわれる草原が失われているのです。ゾウが食べるものもありません。
 北極大陸の沿岸や流氷の上にすむホッキョクグマも、どんどんいなくなっています。流氷がとけて、どんどんちいさくなっているからです。人間が石油などを燃やして、地球ぜんたいの温度が上がっているのが原因です。絵本のなかで、ちいさなホッキョクグマがいいました。「もうすぐ、ふゆになって、こおりがはるよ」「そして、らいねんは、すこしでもせかいがよくなりはじめるといいな」。
 この絵本は問いかけます、「わたしたちがみんなで世界を守っていくために、あなたは何ができるかしら?」と。(1・25刊、A5変型判三二頁・本体一四〇〇円・女子パウロ会)

◎ぼくの家に犬の
ジャックがやってきた
▼ジャックと赤いセーター
▼原国子 文/山岡勝司 絵 お父さんとお母さん、妹とぼくの四人ででかけたデパートのペットショップに、ジャックラッセルテリヤの子犬がいました。かわいくて、みんなみとれてしまったんだけど、家には猫がいるので飼えません。それからはデパートにいくたびに、ジャックとなづけた子犬を見にいきました。
 そんなある日のこと、ジャックがおじいさんとおばあさんに買われていくのを見てしまいました。おじいさんとおばあさんは、くちびるをかみしめながらじっと見ていたぼくに気づいて、「ときどき遊びにおいで」と言ってくれました。ぼくはずっとジャックに会いに行きたかった。そして、ようやくお父さんの車にのって、会いにいくことができたんです。
 それから思わぬことがあって、ジャックはぼくの家にくることになります。いったい、どんなふうにお話がつづいていくのでしょう? それは読んでのお楽しみ。(2・28刊、B5判四八頁・本体一五〇〇円・銀の鈴社)







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