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評者◆安藤礼二
境界、反復、遍在――『聖』から『仮往生伝試文』へ
古井由吉自撰作品 一
古井由吉
No.3057 ・ 2012年04月07日




 古井由吉は、死という境界に立ち、死を反復し、死を遍在させる。「死」という単語はそのまま「生」に、あるいは「言葉」そのものに置き換えることが可能である。文学の「言葉」を生きるために、人は、生と死の境界に立ち、生と死を反復し、作品世界に生と死を遍在させなければならない。そのとき、通常の時間的な秩序も空間的な秩序も崩壊し、現実とは異なった文学的な時間と文学的な空間が立ち上がる。古井由吉の作品を読む者たちは、ある種の戦慄と興奮をもって、時間と空間が新たに交わり、文学としか名づけることのできない表現の地平が今ここに顕現してくる様を、その眼にする。
 古井由吉は現在でも旺盛な活動を続ける現役の作家である。しかし、絶えず変貌を続けるその文学の「現在」を知るための最良の導きとなる作品があり、その文学の「現在」のいわば原風景を形づくることになった作品がある。それが『聖』(一九七六年)であり、『仮往生伝試文』(一九八九年)である。『聖』で提起された問題に、一つの明確な解答が下されたものが『仮往生伝試文』ではないのか。私には、そう思える。『聖』には『栖』(一九七九年)、『親』(一九八〇年)という直接の続編が存在している。『聖』において、土俗的な生活の時空と現代的な生活の時空の境界、生と死の境界を...







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