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評者◆秋竜山
名調子で笑っちゃおう、の巻
No.3056 ・ 2012年03月31日




 今まで、思ってもみなかったこと。突然、ハッ!! と、気づく。高橋敏夫『井上ひさし 希望としての笑い――むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく……』(角川SSC新書、本体七八〇円)を、読む。この部分。
 〈その道筋――すなわち、希望としての笑い。入り口に立ち、耳をすませば、そう、あの歌が聞こえてくるだろう。
 丸い地球の水平線に
 なにかがきっと待っている
 苦しいこともあるだろさ
 悲しいこともあるだろさ
 だけどぼくらはくじけない
 泣くのはいやだ笑っちゃおう
 進め、ひょっこりひょうたん島
 ひょっこりひょうたん島
 ひょっこりひょうたん島
(「ひょっこりひょうたん島」のテーマ一九六四)〉(本書より)
 この、歌の文句に。今さらながら、ハッ!! と、したのである。「ひょっこりひょうたん島」といったら、国民的なものであり、知らないもののほうが、どーかしているというものだ。そーいうこともあって、私も、これがテレビで放映されている時から観たりもしていた。人形劇としては、ずばぬけていた。単純な、原始的な人形の動き、動かし方。と人形のキャラクターのマンガチックで面白いデフォルメな姿形。思い出せば、きりがない。そして、歌詞である。どれだけ口ずさんできたか、わからないくらいであった。のにもかかわらず、なーんにも考えないで、ぼんやりと、歌ってきたのだ。突然、それがわかった。なーんとも恥ずかしい次第である。みんな感じていたのに、自分だけが反応しなかったのだろう。本書での著者による、名調子ともいえる、もうここで感動してしまうのである。著者の声が聞こえてくる(どのような声をなされているか知らないけど)。〈耳をすませば、そう、あの歌が聞こえてくるだろう。〉うまいなァ、じっさい。涙が出てくるほど、グッと感情をワシづかみにしてしまう。そして、たしかに、あの歌が、遠い昔のあの頃から、遠くのほうから段々と歌声が大きくなって聞こえてくるのである。そして、なにより、ハッ!! と、させられビックリしてしまったのは。〈丸い地球の水平線に〉という歌の文句である。つまり、丸い○、地球の水平線に-。○-である。昔の、あの川田晴久の名調子の〈地球の上に朝がきて、その裏側は夜だった〉に、負けてない発想である。子供が、○と-を書きながら歌いだしそうだ。その、なにが面白く、感心するのか!! と、いわれても、面白く、感心してしまったからしょうがない。〈なにかがきっと待っている〉坂本龍馬だって、水平線のむこうで、なにかがきっと待っている、と、口ずさんでいたのだろう。その後の歌詞がたまらない。〈苦しいこともあるだろさ/悲しいこともあるだろさ〉泣けてきますね。なんだか、子供の私に、おばあちゃんがいってくれているよーな。問題とするところは、その後に続く歌詞。〈泣くのはいやだ笑っちゃおう〉と、くる。〈笑っちゃおう〉と、いうのは、人間ならばこそである。後をふりかえってばかりいてはダメ。前をみなくては、その前とは、笑っちゃおう!! である。そして、進め、前進のみだ。







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