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評者◆秋竜山
大人のマネをする子供、の巻
No.3055 ・ 2012年03月24日




 内田樹『「おじさん」的思考』(角川文庫、本体五五二円)。なぜ「マネ」するのか。答えは、「人間だもの」。ものマネ猿というけれど、元をただせば「ものマネ人間」である。人類の歴史は、「ものマネ」の歴史でもあったようだ。テレビの、ものマネ番組に腹をかかえて大笑いするのも、あたり前のことである。「それの何が可笑しいの」なんて人がいたら、正しい人間になりそこなってしまった人かもしれない。ものマネでありながら、ちっとも似ていないじゃないか!! と、いわれれば、それまでだけど。
 〈子どもたちの社会的行動は、本質的にすべて年長者の行動の「模倣」です。そして、あらゆる模倣行動がそうであるように、モデルの「いちばん悪いところ」がいちばん真似しやすく誇張されやすいのです。子どもたちの社会的行動はつねに大人たちの社会的行動の「醜悪な戯画」です。〉(本書より)
 わが子をみて、母親が、父親に「あなたの悪いところばかり似てしまったのよ」と、いう。父親は負けじとばかりに、母親にむかって、「おまえの悪いところばかり似てしまったんだよ」。かくして、わが子は両親の悪いところばかり似てしまっているのである。両親の良いところにすこしでも似てくれて、親孝行でもしてくれたらよかったのに。
 〈今の子どもたちに共通する「社会的規範の軽視」「公共性への配慮の欠如」「ディセンシーの欠如」「ほとんど自己破壊的なまでの利己主義」などは、その原型をすべていまの日本の「エリート」層の中に見ることができます(暴走族の少年たちの反社会性と、中央官庁の汚職官僚の反社会性は、同質のものです)。〉(本書より)
 少子化がすすみ、その内に日本人が、日本列島からスカスカになってしまう時代がくるという。年金が困るという。子供が少ないのは子供のせいではない。親の責任である。国の責任である。責任のなすりっこだ。こんなことをしているあいだは、子供なんかできっこない。一番の責任は子供をつくることのできる年代の人たちだろう。子供をつくるということは、ロボットよりもむずかしく、そして簡単である。どんどん産めばよいのである。先のことなんか、考えないこと。昔は、ビンボー人の子沢山といったが、金持ちの子沢山をやってもらいたいものだ。なんて、いうと、マンガみたいなことをいうな!! と、笑われる内はいいが、叱られてしまうことになる。
 〈子どもたちは親の真似をし、教師の真似をし、「成功者」たちや、指導者たちの真似をしているにすぎません。逆から言えば、子どもを変える方法は一つしかありません。大人たちが変わればいいのです。(略)〉(本書より)
 今の大人がいて、今の子供がいる。それが現代。今の大人のマネを今の子供がする。と、いうわけだ。今の大人も、子供の頃があって、その時の大人のマネをした産物であるだろう。大人が子供のマネをするわけにはいかない。つまりは、子供にマネさせる正しい大人であらねばならない。今の大人がセッセとはげんで子供を産むこと。日本国のために一人でも多く。それを子供は見ている。そして大人になった時、大いにマネるだろう。マネすんな!! といってもマネるだろう。これ以上産むな!! なんていう時代がくるはずだ。







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