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評者◆ベイベー関根
えーと、「牛も大好き/おいしいもんな」だったっけ?――荒川弘『銀の匙 第2巻』(本体四一九円、小学館少年サンデーコミックス)
No.3052 ・ 2012年03月03日




 むっはー、今年も縁起が悪そうだ! よくなる要素ひとつもなし!
 それはともかく、いやー、去年から今年にかけて、小学館集英社プロダクションをはじめとしたBD攻勢には目を瞠るものがあるなー。超個人的な理由でコンチキショーと思わないでもないんだが、それはひとまず措いとこう! パコ・ロカ『皺』、ヴィンシュルス『ピノキオ』、B・ペータース/F・スクイテン『闇の国々』、ほかにもメビウス、エンキ・ビラルとかはまあマストとして、やっべえしまった! と思ったのは、去年の5月に出てたジョアン・スファール版『星の王子さま』だな。ゲンスブールの伝記映画の監督としても有名になっちゃったスファールが描いたサンテックス、そんなのいいに決まってんじゃん、それよりなにこの判型? とかと思って、あえて遠ざけていたんだが、読んでみたらこれがもうボーダの涙! だけど、刊行が去年の5月なんで、今回は取り上げないんだもんねー。
 じゃあ何かというと、荒川弘『銀の匙』2巻なんだな、これが。もちろん原作は中勘助! なわけない!
 いやー、しかしいいマンガだわ、これ。『鋼の錬金術師』とか読んだこともなかったし、作者の名前を「あらかわひろむ」って読むことすら知らなかったけど、よいものはよい! ということにしておこう!
 舞台は北海道某所にある大蝦夷農業高校。さしたる目的もなく札幌から入学してきた八軒勇吾を待ち構えていたのは、個性とモチベーションに溢れたクラスメイトたち。偏差値も低いし楽勝だろうと考えていたものの、なぜこいつらはこんなにやる気満々なのか!? と戸惑う八軒に、次々と襲いかかる試練また試練! そして、八軒はどうやら札幌の親元から逃げ出すためにこの高校にやってきたらしい……しまった、これは1巻の要約だった!
 とはいえ、2巻でもそこんとこはたいしてかわりなく、八軒が中心になってみんなとピザを作ったり、大蝦夷工業高校との交流戦を行ったり、夏休みに可愛い御影ちゃんの家にやっかいになったり、と基本は農業高校生の日常を追っていくもんなんだけど、作者本人が農業高校出ということで、リアリティはてんこ盛りだわ、キャラクターもみんな存在感ありすぎだわ、命と食の大切さ、生きるために他者を殺すという倫理をめぐるテーマには説得力たっぷりだわで、これで累計100万部突破なら、もう何もいうことねえっす!
 萌え雑誌によくある(?)単なる日常ものでも、おっさん誌によくある単なるウンチクものでもなく、自分自身のテーマがガッツリあって、それを表現する術を身につけた作家のマンガは何つっても面白いわ。っていう、それ自体全然面白くない結論で申しわけない!
 でまあ、こういうのの素人実践編みたいのが、『ちはるの森』っていうサイトの「普通の女子が鴨を絞めて、お雑煮にしたお話。」ってのに出てるから、読んでみるといんじゃね?
(セックスシンボル)







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