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評者◆秋竜山
一行で言い切る、の巻
No.3050 ・ 2012年02月18日




 「なるほど、いいこと言ってるなァ!!」と、うならせる言葉。よく考えてみると、当たり前の言葉であるということだ。忘れていた、当たり前の言葉。知らなかった当たり前の言葉。だから、「なるほど、当たり前のこと言ってるなァ!!」で、いいわけだ。そんな当たり前のことをわかってない。それを目の前に活字という言葉で、ポッと出される。本という形で。落合博満『采配』(ダイヤモンド社、本体一五〇〇円)も、「なるほど本」である。胸を打つ活字が並んでいる。一ページに一行か二行で、ここを読め!! とばかりに太線になっている。ここさえ読めば、後は読んでも読まなくてもよいということか。それは親切心というものだろう。昔のように時間がたっぷりあった時代と違って現代は時間がない。あまりにもなさすぎる。そんな時、そのない時間を自分のものにするか。もー、それしかないだろう。なるほど!! と、うならせるには、たったの一行でよいのである。一行で言い切ることだ。ぐだぐだ書かれた文章につきあっている時間はないのである。で、本書を見て、「だとしたら」ということになると。究極は、目次における1章から6章までの、たったの一行コピーにあるわけで、それさえ読んで感心すれば、一冊丸かじりということになるのだと思う。たとえば〈一流には自力でなれるが、超一流には協力者が必要〉というコーナーがある。これを読んだだけで、「なるほど」と思い。当たり前だと思い。中身を読まなくても、わかりました!! と、いう気分にさせられてしまうものである。でも、ちょっと待てよ!! 自分のカイシャクの限界というものがあるだろう!! という気持もしてくる。いったい、どのようなことが書かれているか。そう思わせるのが名人の本造りであろうし、その手にのせられたということか。
 〈ある時。妻・信子が、知人から聞いた話が心に残ったと、私にも教えてくれた。「一流の領域までは自分一人の力でいける。でも、超一流になろうとしたら、周りに協力者が必要になる」なるほど、と思った。私の現役時代を振り返ってみても、正鵠を射た言葉である。一流の領域をどこに定義するかにもよるが、正しい方向に努力を重ねれば、少なくとも一人前と言えるような仕事のスキルは身につけられるだろう。〉(本書より)
 と、いうことは、超一流になれないということは、周りに協力者がいないということか。つまり、周りに協力者があつまらないものは、超一流にはなれない。本当の答えというようなものが本書でのべられているけど、ね。
 〈そもそも、野球のような技術事は模倣から始まると言っていい。私たちが子供の頃は、長嶋茂雄さんや王貞治さんのバッティングフォームを真似て棒切れを振った。本格的に野球に取り組むようになれば、野球専門誌に掲載されているプロ選手のバッティングの分解写真を穴のあくほど眺め、「ここはいい」と採り入れた経験もある。〉(本書より)
 人間、オギャとうまれ、それからというものは死ぬまで、先人の模倣人生である。
 〈模倣とはまさに、一流選手になるための第一歩なのだ〉(本書より)
 一流選手を、一流人間と置きかえてもいいだろう。でも一般的に模倣はきらわれるみたいだ。







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