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評者◆諏訪哲史
「謡い」の思考――生のなかに死を、死のなかに生を見いだす眼が、古井由吉の筆、すなわち思考に避けがたくやどっている
蜩の声
古井由吉
No.3049 ・ 2012年02月11日




 小説とは、言語をあやうくさせるものである。言語をあやうくし、それによって生をあやうくさせる。言語を、常とは異なる見なれぬものに変え、そして、その言語にふれるすべての者の相貌を変える。こと「言語芸術」としての、本来的な意味での小説は。読む者も書く者も言語をゆさぶり、あやうくし、言語にゆさぶられ、あやうくされる。これら双方からの「批評」を小説の言語はうけとめ、両者の間でかなしく発光する。
 この、言語が帯びる「あやうさ」に対し、古井由吉ほど自覚的な作家はいない。「私は若い頃から、建築の内に破壊を見るという傾きがあった。以前の破壊を思うばかりではない。将来の解体を思うのでも、かならずしもない。建築と破壊とを同時に、同一のもののように感じる。」(「蜩の声」)
 小説という言語営為の「芸術性」に自覚的な作家ほど、「造る」いとなみの奥に「毀す」いとなみが潜むことを知悉し、その両義性に加減をしながら言葉をつむいでいる。造ると毀す、建築と破壊は、古井氏のながく扱ってきた主題に言い換えれば、「生」と「死」である。生のなかに死を、死のなかに生を見いだす眼が、古井氏の筆、すなわち思考に避けがたくやどっている。
 書く私、読む私は生者だ。言葉をつむぐ私は生者だ。しかし言葉は、我々と同じ生者であろう...







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