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評者◆秋竜山
「群れ」とはなんでしょう、の巻
No.3049 ・ 2012年02月11日




 長谷川英祐『働かないアリに意義がある』(メディアファクトリー新書、本体七四〇円)では、よく働くアリと、働かないアリのことが取りあげられているが、働かないアリが存在していたことを知った時は驚いたものであった。そのことで、確かにアリを見る眼がかわった。冬はアリの姿を見ないが、夏になると庭をはいまわるアリ達を見る時、このアリは働きアリか、働かないアリか、見きわめようとする。このようなアリの生態を知ったのは近年のことであって、子供の頃はそんなことは知らなかったし、アリといえば、すべてのアリが働きアリであると思っていた。アリとキリギリスの話にしても、働かないアリがいることを知っていたら、話の事情も違ってきただろうと思う。本書の〈第5章 「群れ」か「個」か、それが問題だ〉が面白い。
 〈社会をつくる生き物たちは、みな「群れ」ています。社会性をもつ生き物以外にも「群れ」をつくる生物は数多くいます。しかしいったい「群れ」とはなんでしょう。例えば、あなたの家の庭に近所のネコが3匹いたらそれは「群れ」なのでしょうか?〉(本書より)
 このような光景はよくみかける。そんな時、ネコが群れているなどという観念はまったくなかった。あらためて、群れであるかないかとなると、よくわからない。
 〈「庭にネコが3匹いる」という状況を考えてみます。このネコたちが、お互いの存在にも気づいておらず、互いになんの関係ももたず庭という範囲に存在しているだけだとしたら、誰もがそれは群れではないと思うでしょう。しかし、その3匹が、互いの位置を把握していて、獲物である1匹のネズミを追い詰めるために互いの位置を調整しているとしたら、これは群れだと思うでしょう(実際にネコが互いに協同することはありませんが、ライオンなどはこうした行動をとります)。〉(本書より)
 1匹のネズミを、3匹のネコが協力しあって、追いつめていくのを見てみたいものだが、ネコはそんなことはしない。だからネコであると思う。ネコらしいとも。ライオンなどは協同した行動をとるというが、ネコに近いトラはどーなんだろうか。やっぱりネコと同じなんだろうか。別の解説で面白かったのは、
 〈複数の個体が集まっていれば群れと呼べるわけではないことは、池のなかの石の上でひなたぼっこをしているカメたちを考えてみればわかります。確かに、池のなかの石の上にはたくさんのカメたちがひしめき合っていますが、彼らは個別に日に当たっているだけで、集団全体としてなんらかの機能を果たしているわけではありません(少なくともいまはそう考えられています)。このような場合、いくら固体の密度が高くても、群れとしての意味を考えること自体が無意味です。〉(本書より)
 本書では〈なぜ群れるのか〉に続くわけだが、面白かったのは、
 〈小魚の群れのなかの1匹1匹の動きを観察すればわかりますが、魚たちは常に集団の内側に入り込もうとしているために、密な群れが保たれているのです。〉(本書より)
 なるほど、それで群れている小魚はバラバラに散ってしまうことはないのか。よくわかった。水族館などでも、やっぱりそうなんだろうか。







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