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評者◆鴻農映二
「木浦の涙」、じゃなく、「木浦の光」――聲玉記念館など見てまわり
No.3044 ・ 2012年01月01日




 全羅南道の木浦は、「芸郷」として知られる。つまり、芸術が盛んな都市だ。3泊4日の短い日程でも、それを確かめることができた。
 食堂や喫茶店に、必ず、絵や書が掛かっている。ソウルでも見かけない額縁店街、どうやって、この大きくて重い彫刻群を運び上げたの!?と驚く儒達山中腹の彫刻公園、そして、木浦港を見下ろす旅客ターミナルの最上階にギャラリーがある。この地域の芸術界を代表するトップにインタビューすると、全国的な芸術団体が組織される1年前に、木浦では芸術団体がつくられ、それがモデルとなったという。現地を訪れてこそ、得られる知識だ。当地の画家、尹鉉植氏の案内で、いろいろ見て回った。中でも、感嘆したのは、耐火製品で成功した実業家がつくった、「聲玉記念館」。ここには、秋史体で有名な金正喜の隷書と行書の実物がある。また、雲浦の「彩色花鳥」、劉松年の「山水族子」、心汕や青田の山水画などなど……。
 この館のキュレーター、チョー女史は、美術史を専攻した才媛で、古典の造詣が深い。土地が524坪、建物が224坪の館には、展示品の3倍の量が所蔵されているという。展示を、季節ごと、取りかえる考えだ。
 「日本人がたくさん訪れるんですよ」
 聞けば、日本人は、どこにどんな名品があるか、とても詳しく知っているという。
 木浦周辺には、多島海で、小さな島が1004ヶ所も存在する。それらが、波を静めてくれるので、津波の心配はない。では、なにが心配かというと、人間のジェラシーが恐ろしいと尹画伯はいう。いつ、なんどき、どんな噂を立てられるか、気を許せないそうだ。
 慌しい日程だったが、木浦は田舎どころか、東京に対する横浜のようなモダニズムがあった。また訪れたい、かなり地形が長崎に似た都市だ。
(韓国文学)







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