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評者◆伊達政保
42年前の音楽の新鮮さが「発見」された――由紀さおりとピンク・マルティーニのコラボレーション・アルバム『1969』(EMI)
No.3043 ・ 2011年12月24日




 歌手の由紀さおりとアメリカのポップ・ジャズ・オーケストラのピンク・マルティーニのコラボレーション・アルバム『1969』(EMI)が全世界で発売されヒットしているという。彼女自身の「夜明けのスキャット」(作曲・いずみたく)をはじめ、69年レコード大賞の相良直美「いいじゃないの幸せならば」(作曲・同)、ミリオン・セラー曲いしだあゆみ「ブルー・ライト・ヨコハマ」(作曲・筒美京平。当時、日本の曲が法で禁止されていた韓国でも大ヒットした)、黛ジュン「夕月」(作曲・三木たかし)など、69年のヒット曲のカヴァーが収められ、ほとんどが日本語で歌われているのだ。しかもこの企画、オーケストラ・リーダーのトーマス・M・ローダーデールが由紀さおりのLPを偶然「発見」し、カヴァーしたところから始まっている。それを受け日本側プロデューサー佐藤剛などがトーマス側に働きかけ、由紀さおり自身も選曲など企画に加わり、ピンク・マルティーニにプロデュースとアレンジを依頼することによって、このアルバムが実現した。
 たしかに円熟し艶やかさを増した由紀さおりの歌唱は、このアルバムに聴かれるとおり、定評のあるところだし、日本の「歌謡曲」が持っている世界性を、今回証明したと言うこともできるだろう。また現在からみて42年前のアレンジをも含めた音楽の新鮮さが「発見」されたともいえる。ただ、海外版では琴を使ったオリエンタル風アレンジの「夕月」が一曲目となり、日本語で歌われているとはいえ「マシュ・ケ・ナダ」(作曲ジョルジュ・ベン)などのラテン・ポップ調の曲の方が、人気が高いということも考慮に入れておく必要があるだろう。さおり自身の声は、この曲が一番チャーミングのようにオイラには聞こえるがね。
 ところで1969年についてライナーで佐藤利明は次のように書いている。「1969年という年は」「日本の、世界の音楽シーン、ポップカルチャー、政治、モラル、あらゆるコトやモノが大きく変革をとげた年でもある」。そして「69年という年を『すべての原点』として捉え」「1969年に始まった『20世紀の歌謡曲』が、由紀さおりの『21世紀の歌謡曲』に繋がってゆくと信じて…」と。こうしたコンセプトは、当初、日本側からの提案だったが、トーマスの賛同を得て日米共同プロジェクトに発展していったという。
 オイラも以前、69年について「文化的に見れば、エネルギーあふれた混沌の時代から各ジャンルの完成、成立の時期に入っていく」「個々のジャンルの文化論から考えれば、69年は重要な年になるのだと思う」と書いていたのだ。







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