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評者◆秋竜山
ロボットと人造人間、の巻
No.3042 ・ 2011年12月17日




 加藤秀俊『隠居学――おもしろくてたまらないヒマつぶし』(講談社文庫、本体六四八円)に、ロボットのことがのっている。人間は退化していくのに、ロボットは進化していくようだ。昔のロボット(私なんかが子供の頃のロボット)と今のロボットでは、かなり今風になっている。まず、ロボット馴れしてしまったせいか、ロボットという名前に対しても、普通のような気がしてくる。私の子供の頃の少年雑誌などではロボットであったが、時には「人造人間」なんて名前もでてきたりした。私は子供心に、片仮名のロボットよりも漢字の「人造人間」のほうが、なにかしら、ゾクゾクしたものを感じた。「人造」という言葉が、おどろおどろしく感じられたのだろうか。「ロボット人間」といっても、おそろしさのようなものがなく、かわいた感覚であった。
 〈ああいうのを、むかしは「人造人間」といった。昭和初期のマンガでは阪本牙城えがくところの「タンク・タンクロー」というのが有名で、少年時代のわたしは耽読いたしました。(略)手塚治虫さんの名作「鉄腕アトム」にはじまる日本のアニメの主人公がしばしばロボットであるのもこんな伝統と無関係ではあるまい。「キカイダー」しかり、「鉄人28号」しかり。いつの時代になっても人間もどきの機械人間、あるいは人間機械というのは人気者であるらしい。〉(本書より)
 「鉄腕アトム」をロボットというが、人造人間とはいわない。ロボットとしたから、当時としても新鮮さがあったのか。これが、「鉄腕アトム」は人造人間である、なんていいかたをしたら、昔の時代の鉄腕アトムになってしまうだろう。それに、手塚治虫という超近代人間の描くマンガには人造人間なんて、そぐわないだろう。そして、当時の子供たちは手塚治虫の鉄腕アトムによって、人間より人間的なロボットという名前を初めて知ったのではなかろうか。
 〈その専門家のはなしでは、これから役にたちそうなロボットの分野のひとつは地雷探査ロボットやら、被災地での人命救助ロボットなど、災害用ロボットなんだそうだ。〉(本書より)
 危険なことはロボットまかせにすればよいのである。それでは、ロボットがかわいそうだ!! なんて、声があったとしたら、これも変な話だろう。そーは、いうものの、それが人情というものではないか。道ばたの石ころをみて、「いつの頃生まれたのかしらないが、よくぞ今までたえてきたものだ」なんて涙を流したとしても、これぞ人間しかできない芸というものかもしれない。なんて、思うのも変な話だろうか。
 〈戦争も全部ロボットにやらせたらどうだ。アメリカ兵何十万人かが中東に出兵したらその戦費はたいへんだ。だがそのかわりロボット兵士を派遣したらよろしい。攻撃されるほうもロボット兵で迎撃する。ロケット砲でもミサイルでもじゃんじゃんつかったらよろしい。「戦死者」がたくさんでるだろうが、しょせん金属のカタマリである。(略)戦争の好きな人間はリモコンで数万のロボットを操作し、戦闘させればいい。(略)じつはこんなアイデアはすでにチャペックが予見しておりました。〉(本書より)
 本書のタイトル通り、横町のご隠居ロボットってのはどーかしら。「まあおあがり、お茶でもいれようか」。それよりか、美女ロボットがいれてくれたお茶をのみたい。







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