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評者◆ベイベー関根
Sunny Day,Sweeping Up Clouds Away...松本大洋著『Sunny 第一集』(本体九〇五円、小学館Ikki Comix)
No.3040 ・ 2011年12月03日




 えーとえーと。この半年でとりあげなきゃいけないのは何だったかな。いがらしみきお『i』かな。これは傑作! だけど、前に『Sink』をやったからヨシとしとこう。吉田秋生『海街Diary4帰れないふたり』、ほらいわんこっちゃない、またヌルい展開になってきてるやんか、『河よりも長くゆるやかに』と同じだ!しりあがり寿『あの日からのマンガ』? うーん、これもいいな。だけどほかにガッツリした作品を描いてくれそうだしな……とかいってると、半年経っちゃうわけだよな。
 だけど、ここに来てバタバタと、「おお!」という作品が出てくれたんで、順次紹介するとするか。
 まず、今回は松本大洋『Sunny』1巻。
 いや、正直ここ数年、松本大洋には興味なくなってたんだよね。フツーと違う地平を見てる人の話とかもういいやと思って。『GO GO モンスター』とか超退屈。『竹光侍』は違ったのかもしんないけど、1巻だけ読んでもうアキちゃって。
 で、あんまり期待しないで本屋の店先でパラパラっとめくってみたら、「こ、これは……!」
 というわけで、買ってきました、特装版じゃない方。
 要は、養護施設「星の子学園」で暮らす子供たちのそれぞれの目から見た世界、ということですな。登場するのは、頭はいいけど親が施設に入れることを選んじゃったせい(静)ちゃん、なぜか頭が総しらがでケンカっ早いホワイトことはるお、頭のちょっと薄くて手くせの悪いじゅんすけ、はるおが秘かに想うめぐむ、図体が異様にでっかいたろう君、などなど……。ふとしたときに襲いかかってくる孤独、男子と女子との微妙なすれ違い、ダメな親とのキッツい話。そして、庭に置いてあるサニー1200は大人禁制。子供だけが乗り込んで空想の世界に浸るためのカラクリなんじゃ。
 いやー、じわっと来るなー。この先もこんな感じで淡々と進んでほしいなー。
 実は、じわっと来るには個人的な理由もあって、中学生のころ、近所にやっぱり養護施設があって、そこからの生徒とけっこう友だちだったりしたんだよね。だからというわけじゃないけど、ガラの悪い学校だった……。施設から来てる連中はみんなモヤひいてた……。目を輝かせて「ヤクザってホントはいい人なんだよ!」なんていう奴もいた……。アホだった……。みんなどうしてるかな……。
 すまん、『Sunny』に戻ろう。しかし、絵はホントにいいよね。これ筆? 『竹光侍』のときは、まあそうだろくらいにしか思ってなかったけど、これで現代の風景を描くってのは、大変なことだなこりゃ。構成もひとコマひとコマ考え抜かれてて、しかもしつこくない。これまでも松本大洋で一番好きな本は『青い春』だったんだけど、これはそれを更新したね!
 関係ないけど、いまおかしんじ『UNDERWATER LOVE』も、せめてこれとか渡辺ペコ『にこたま』くらいには現実直視しないとダメなんじゃないの。
(セックスシンボル)







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