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評者◆秋竜山
笑いの公平性、の巻
No.3038 ・ 2011年11月19日




 三浦朱門『老年の品格』(海竜社、本体一四二九円)を、まず書店で見つけた。それも本のタイトルではなく、著者の三浦朱門という名前が目に飛び込んできた。有名な文学者である。と、同時に、この文学者の書いたものなら面白いだろうと思った。面白いはずだといえるのも、以前からファンであったからだ。タイトルの〈老年の品格〉だけで、三浦宋門でなかったら関心を持てたかどーかはわからない。そして、いっそう好感を持てたのは、オビであった。〈笑われる老人になろう〉と、太字で書かれてあった。これが効いている。老年とか老人とかいう文字を見ると、人によって好きずきがあるだろうけど。老年の品格という、その老年にも、笑われる老人になろうの老人にも、「ちょっと」って気がしないでもない。だからといって、若者というのがいいかというと、余計に「ちょっと」度が強くなる。〈笑われる……〉が、いい。〈笑われる人間になろう〉でも充分、効果的ではなかろうか。それから、本の中身を例によって、パラパラやった。〈笑い〉と、いう活字が各ページごとに、星のごとく散りばめられている。面白い本というのは、面白い活字ばかりが並べられていることだと思う。面白い活字が多く並べられゝば面白くなるのは当たり前だろう。その反対に、つまらない活字ばかり並んでいる本は、つまらなくなる。笑いに関しても、多く使われゝば使われるほど、たのしい本になるはずだという単純な発想である。もし、これが、「涙」という活字ばかり使われていたとしたら、うっとおしくなってくるだろうし、「叫び」なんて活字ばかりだと、やたらと叫んでばかりいるような内容になるだろう。「怒り」なんてのも、怒ってばかりの本になってしまうのではなかろうか。本文の〈第九章 人生が楽になる笑いの三要素〉では、〈おかしさを発見する三つのポイント〉と、いうのがあり、〈おかしさを発見するには、第一に知識が必要である。〉いろんなことを知ることにより笑える現象をうみだす。〈第二に、ユーモアのセンスは、広い視野を持つことである。〉と、いう。〈第三は、自分の視点を少しずらして見ることである。〉これで、人生が楽になれたら、しめたものである。
 〈最初に使った例、松村剛がズボンをはかずにバスに乗ろうとしたことは、当人にとっては、大失敗だし、どうやって、家までズボンをはきに帰ったかと思うと、同情せざるをえないが、やはりそれを笑いながらも、私たちもまたその種の失敗をしているのだと、自分をも笑うことで、つまり人生をより柔軟に生きる術を見いだせることであろう。〉(本文より)
 笑ったり、笑われたりである。そーいえば、ホテルのスリッパのまま、帰り、街中を歩きながら、それに気づき、あわててホテルに引きかえしたと、仲間の一人の失敗ぶりをみんなで笑った。私も大笑いした。その自分が、もののみごとに、同じことをしでかしてしまった。「人のことは笑えないねえ」。「そーいえば私も。」なんて人もいたりするだろう。笑ったぶんだけ笑われる、のが笑いの公平性である。







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