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評者◆秋竜山
思い通りに描けません?、の巻
No.3037 ・ 2011年11月12日




 「ハハハ……、なるほど」と、感心したりする。なるほど、の上に、ハハハ……がつく。ハハハ……と、軽く笑う。心地よい笑い、なるほどという納得ということになるだろう。アルボムッレ・スマナサーラ『バカの理由』(サンガ新書、本体七〇〇円)を読んでいたら、ある項目で「ハハハ……、なるほど」と、思った理由であった。「ウーム、なるほど」と、うなる動作の上のレベルになると、「ハハハ……、なるほど」となる(私の場合は)。〈すべてのものは因縁による一時的なもの〉では、「このバラは赤い」というとらえ方がある。私も絵の具を使う仕事柄、色とのつきあいが毎日あるわけだ。赤いバラを描く場合、「ウム、このバラは赤い」と、とらえる。そして、目の前の赤いバラ色に絵の具の色をぬる。「これで、よし」。思ったように描けたか描けなかったかは別の次元だ。
 〈たとえば、真っ赤なバラを見たとして、「このバラは赤いです」というのは、成り立たないのです。見える「赤」は光なのだ、ということです。もし、それを赤の波長を含まない純粋な青い光の中で見たらどうなるでしょう?あるいは、赤い光しかない中で見たらどう見えるでしょう?紫外線や赤外線を通して見たらどう見えるでしょうか。それぞれ見方は違ってきます。「これが赤」「これが青」ということは成り立たないのです。「色」の問題は、結局どんな光が当たるかということだとわかります。(略)このことを仏教では、「因縁によって一時的に現象があらわれることを発見する」というふうにとらえます。これが「智慧」です。〉(本書より)
 昔、息子が小学生の時、「お父さん、ボクわからなくなった」と、いった。学校の図画の時間に、先生が、「絵というものは、自分の思う通りに自由に描けばいいんです」と、いった。そして、野外へ出て写生の時間の時、息子は先生のいったことを忘れなかった。そして、思い通りに写生していた。先生が後ろに立った。「ちっと、まて」と、いった。息子の絵に先生がアドバイスをしてくれたのである。「この部分は、こーなるべきだろう。ホーラ、よく見てみなさい。こーなっているだろ」。息子は、これで、わからなくなってしまったのだ。「先生は思い通りに自由に描けといったのに、ちっとも自由じゃァないではないか」と、いうのが息子の意見であった。私はそれを息子から聞いて、「ハハハ……、なるほど」と、いったように思う。いまだにそのことを忘れず記憶として残っているのは、正しい答えを息子にいってあげなかったからだろうか。〈現象というものは、すべて因縁による一時的なものだとわかるのです。明るい太陽光が当たれば、赤、純粋な青い光や紫外線、赤外線が当たればまた別の色、白い光が当たれば別の色、室内では別の色…となります。そういうふうに考えていくと、「本当は何色だろう?」と知りたくなるでしょう。しかし、「本当の色」などというものは存在しないのです。本来、「本当にこの色だ」というものはないのです。すべて一時的です。〉このバカの一つおぼえで、自分の描いたバラの色を変てこりんに色をつけて、この一文をマネで語ったとしたら「なにをバカなことをいってるんだい」と、なるのかしら。







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