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評者◆内堀弘
古本屋の幸せ――古本屋のイメージは変わっても、面白さの底にあるものは変わらない
No.3036 ・ 2011年11月05日




某月某日。恒例の神田古本祭りにあわせて、神保町古書店街のガイドブックが書店に並ぶ。古書店案内といっても、今では人気芸能人が登場したり、イケメン若店主の笑顔がはじけていて、一昔前のとは大違いだ。
 そう、古本屋のイメージはどんどん変わっている。たとえば、いま流行のブックカフェも古本屋の新しいスタイルだが、そればかりでなく若い人たちの個性的な店がそこここに姿をみせた。
 インターネットのUS TREAMで「わめぞTV」という番組を見た。「わめぞ」とは早稲田、目白、雑司ヶ谷界隈の若い古本屋さんたちの集まりで、この番組では夏に代々木上原でオープンしたばかりの新人古本屋(古書リズムアンドブックス)に一時間ほどもインタビューしている。これが面白い。
 聞き手は早稲田の古書現世の向井さん。話の引き出し方が本当に上手で、若い夫婦が自分たちで古本屋をやりたいと思い、それを実現していくプロセスが気負わない言葉で語られる。豊富な資金があるわけではない。潤沢な売り上げがあるわけでもない。それでも、自分たちの本屋を日々作り上げていく。そんな幸せが伝わってくる。きっとそれが古本屋の原点なのだ。
 会話の中に、去年下北沢で開店した古書赤いドリルのことが出てきた。ここも相当個性的というか闇雲な古本屋で、というのは、この店の基調は「連合赤軍」なのだ。店のHPにはこうある。
 「連合赤軍事件を通してぼくは古本屋と出会いなおし」「いつか連合赤軍事件で古書目録を作ろうとライフワークをさだめつつ、古書店開業を発心するに至りました」。
 店主は40歳そこそこのナイスガイなのだが、なぜだろう「商売繁盛」より「蜂起貫徹」みたいな言葉にグッとくるらしい。店のブログ「赤いドリルの夢は夜ひらく」には日々の奮闘ぶりが率直に(いや、愉快に)綴られている。そういえばこんな闇雲な志で古本屋を立ち上げるのも、古本屋の大切な原点だった。
 古本屋のイメージは書き換えられている。でも、古本屋の面白さの底にあるものは、なにも変わっていない。
(古書店主)







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